1. 年次有給休暇を全従業員が5日取得するためにはどんな管理方法があるか

労務管理Q&A

2021.05.10

年次有給休暇を全従業員が5日取得するためにはどんな管理方法があるか

ご質問内容

当事業場は乳製品を製造しているため、年中無休で稼働しています。

従業員は1か月単位変形労働時間制のため公休日は各人ごとに異なります。このような場合、派遣労働者を含めて全従業員に年次有給休暇を確実に5日間取得してもらうには、どのような方法があるでしょうか。

専門家からの回答

「班分けして交替で取得」「誕生日や結婚記念日など取得すべき日を指定する」などがあげられます。

派遣先は、受け入れた派遣労働者の年次有給休暇の保有日数がわからないので、派遣労働者を受け入れる際に派遣先と派遣元事業主とで「どのようなルールで取得をすすめるか」について打ち合わせをしておく方がよいでしょう。

■ 事業主の積極関与が求められる制度

「働き方改革」の一環として改正された労働基準法第39条第7項では、年次有給休暇(以下「休暇」と略します)を10日以上付与した労働者について、うち5日を付与から1年以内に取得させるよう定めています。

この条文は「事業主が労働者ごとに時季を定めて5労働日の休暇を与えなければならない」という表現なので、労働者の意思に沿わなくても、事業主が命令(時季指定)して労働者に休暇を取得させる趣旨になっています。

特にシフト制で労働している場合、各労働者の休暇付与日(基準日)や、そこから1年以内に取得した具体的日数を管理するのも容易ではありません。また、労働者の希望にまかせていると、5日取得しないままうっかり1年が経過してしまうこともあります。
そこで、年中無休で稼働する事業場のシフト制労働者に、どのようにすれば確実に5日取得してもらえるかを考えます。

■ 班編制により交替で連続取得

従業員をいくつかの班に分けて、交替で取得してもらいます。交代制勤務の場合、公休日をつなげて1週間連続の休暇期間とする方法もあります。

班編制により交替で連続取得する例

班編制をする場合のメリットは、雇用継続6か月未満のためまだ休暇が付与されていない労働者を、休暇付与後の班メンバーにすることができることです。
このため、班編制は、部署ごとに必要な人手を確保する都合ほか、付与日(基準日)の属する月によって編成するのもよいでしょう。

■ アニバーサリーを指定

特定の記念日を、休暇取得日とする方法です。例えば「自分の誕生日」「結婚記念日」「こどもの誕生日」には必ず取得する、というような決め方です。

記念日が設定しづらい場合は、「自分の誕生日と、その2,4,6,8か月後の日、取得できなかった日があれば10か月後に取得」のように決めたり、入社日がまちまちの労働者が多い場合は「付与日(基準日)の1,3,5,7,9か月後、取得できなかった日があれば11か月後」と機械的にルール化している事業場もあります。

■ 派遣労働者の年次有給休暇保有日数と付与

派遣労働者は、同じ派遣元事業主と労働契約が継続している長さが各人で異なるため、派遣先では各人の休暇保有日数がわかりません。このため、派遣先と派遣元事業主との間で、派遣労働者の休暇管理について打ち合わせをしておくことをおすすめします。

派遣労働者が休暇を10日以上付与されている
NO YES
➀派遣労働者が休暇を10日以上保有する日(基準日)を確認し、その後に派遣先のルールにより取得する

②派遣先の創立記念日や夏期に全労働者いっせいに休暇とする。

派遣先の取得ルールにあわせ、派遣元事業主が派遣労働者の休暇取得日を5日時季指定する旨を労働契約(派遣元事業主と派遣労働者間の)内容とする。

上記②のように、事業場をクローズして全労働者にいっせいに休暇を取得する場合は、休暇が未だ付与されていない派遣労働者は当日どう対処するべきかが課題です。

  1. 当日だけ派遣元事業主の指示で別の仕事に従事してもらう(派遣元事業所でキャリア形成のための教育訓練の日、定期健康診断の日としている例もあります)。
  2. 当日は使用者(派遣元事業主)の責に帰すべき事由による休業とし、平均賃金の100分の60以上の休業手当を派遣元事業主が支払う(労基法第26条)。
  3. 当該派遣労働者の労働契約時に示した勤務カレンダーにおいて、当日は公休日である旨をあらかじめ明示し合意を得て契約する(有期労働契約については契約期間中の労働日を労働条件通知書で明示しなければならないからです)。

監修:田原咲世 氏(北桜労働法務事務所 社会保険労務士)

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