1. 全国型 vs 地場型──製造業が失敗しない派遣会社の選び方とチェックリスト

派遣コラム

2025.09.29

全国型 vs 地場型──製造業が失敗しない派遣会社の選び方とチェックリスト

全国型 vs 地場型──製造業が失敗しない派遣会社の選び方とチェックリスト

Q:製造業の企業として、全国型と地場型、どちらの派遣会社を選ぶべきですか?

A:企業の人材ニーズによって最適解は異なります。以下に代表的なケースを示します。

➢大量採用・複数拠点展開・教育体制重視であれば全国型が有利です。全国型は拠点網が広く、応募数も多く、研修や制度が整っており、標準化された人材供給に長けています。

➢一方で、定着率や柔軟な現場対応を重視するなら地場型が適しています。地域密着の強みを活かし、通勤圏の人材を紹介でき、職場訪問や家庭事情まで考慮したフォローも可能です。

➢さらに、両者の長所を活かすハイブリッド運用(基幹:全国型、応援:地場型)という選択肢もあります。

つまり、「形式」ではなく、「人材の確保・育成・定着までの再現性があるかどうか」が最も重要です。
この記事では、その理由について詳しくご説明してまいります。

どんな求職者が集まる?全国型・地場型を選ぶ理由から自社に合う派遣会社を見極める

派遣会社には全国展開型と地場密着型の2種類が存在します。一見、規模やエリアの違いに見えますが、実際にはそれぞれに「得意な人材層」「得意な採用戦略」「得意な現場支援の方法」があり、単純な比較では語れません。

以下では、まず「求職者にとってどちらが魅力的か」を軸に、全国型と地場型の違いを見ていきます。これを理解することで、逆に企業側(派遣先)が「どちらの派遣会社が自社のニーズに合うのか」を判断しやすくなります。

全国規模の派遣会社を選ぶメリット・デメリット(求職者目線)

全国規模(大手)派遣会社とは、全国各地に拠点を持ち幅広い企業と取引する大手の派遣会社です。まず、大手派遣会社を利用する主なメリット・デメリットを求職者の視点から整理します。

研修制度やスキル支援が充実

大手派遣会社は初期研修から段階的な研修、資格取得支援制度までスキルアップのサポートが整っているところが多く、キャリア形成に役立ちます。派遣登録オフィスも全国の駅前などにあり、初心者でも安心して利用しやすいとされています。

豊富な求人と全国ネットワーク

求人数が圧倒的に多く、希望条件に合う仕事が見つかりやすい点が最大の魅力です。大手は全国に拠点があるため、居住地を変えても同じ派遣会社で仕事を継続できるメリットもあります。実際、夫の転勤で引っ越す場合でも転居先の支店で新たな仕事を紹介してもらえ、雇用が継続できるとの声もあります。

待遇、福利厚生の手厚さ

大手派遣会社は資本力があり、社会保険完備や有給休暇制度など福利厚生が充実しています。給与水準も高めに設定されていることが多く、「大手なので求人数が豊富で担当者の対応もいい」という評判も見られます。

一方で、大手ならではのデメリットも指摘されています。

応募競争率が高い

登録スタッフが非常に多いため、1つの求人に対する社内選考(エントリー)の競争率が高く、希望の仕事に就くまでに時間がかかる場合があります。実際「ライバルが多いため社内選考に通りづらいことがある」とも言われます。

対応が画一的・手薄になりがち

大手では1人のコーディネーターが多数のスタッフを担当するため、面談や仕事紹介が機械的で人情味に欠けるという意見もあります。担当者が多忙な場合、連絡が遅れるなどフォローが手薄になるケースもあるようです。

手続きや規則が煩雑

組織のルール徹底により、契約手続きや勤務管理のルールが厳格です。そのため手続きが煩雑に感じられることもあります。大手ゆえの事務的な対応に戸惑うという声も一部あります。

こうしたデメリットは「すべての派遣会社に当てはまるわけではない」ものの、求職者にとって大手を選ぶ際に留意すべき点と言えるでしょう。

メリット デメリット
研修制度やスキル支援が充実しており、キャリア形成に役立つ 登録スタッフが多く、求人の応募競争率が高い
豊富な求人数があり、希望条件に合う仕事を見つけやすい 担当者1人あたりのスタッフ数が多く、対応が画一的・手薄になりやすい
全国ネットワークがあり、引っ越しや転勤後も同じ会社で継続可能 契約手続きや勤務管理のルールが厳格で、煩雑に感じられる場合がある
社会保険・有給など福利厚生が充実、給与水準も比較的高め 事務的な対応に戸惑うことがある

地域密着型の派遣会社を選ぶメリット・デメリット(求職者目線)

地域密着型(地場)派遣会社とは、特定の地域に根差して事業展開する中小規模の派遣会社です。製造業の派遣でも各地方に地元企業と強い繋がりを持つ派遣会社が存在します。地場派遣会社を利用するメリット・デメリットを求職者目線で見てみましょう。

手厚い個別サポート

登録スタッフが少人数のため1人ひとりへのフォローが厚く、密な連絡や親身な相談対応が期待できます。小規模な分フットワークが軽く柔軟に対応してくれる、アットホームな雰囲気で相談しやすい、といった利点もあります。

地元優良企業の求人に強い

地域に密着しているからこそ、その土地で有名な優良企業や中小企業の求人案件を多数扱っています。大手には出てこないニッチな案件や、その地域ならではの仕事を紹介してもらえることもあります。実際「地域に密着した優良企業案件の紹介を受けられる」点は地場派遣会社ならではのメリットです。

地元で働ける安心感

自宅から通える範囲の仕事を紹介してもらえるため、地元を離れずに働き続けたい人には大きな魅力です。地域密着型は地元企業との特別な関係性を築いている会社も多く、「地元で働きたいなら地元の派遣会社の方が断然有利」という意見もあります。登録スタッフ数が少ない分、求人応募の倍率が低く希望の仕事に就きやすい場合がある点も見逃せません。

地場派遣会社にもデメリットがあります。

求人案件数が限られる

取り扱い案件の数は大手に比べて少なく、「案件数に物足りなさを感じる」ことは否めません。希望に合う仕事がタイミングよく見つからない場合、別の派遣会社も併用するなど工夫が必要です。

研修・福利厚生の充実度に劣る

資本力で勝る大手と比べ、どうしても給与や福利厚生の面で見劣りしがちです。研修制度や資格支援などもあまり期待できない派遣会社が多いとされています。実際「給与や福利厚生の面では劣ることが多い」点は中小派遣会社の弱みとして挙げられています。

玉石混交のリスク

全国展開の大手に比べ知名度が低い分、派遣会社自体の信頼性にばらつきがあります。中には残念ながら悪質な業者が混在している場合もあるため、口コミサイトで評判を調べるなど見極めが必要とされています。

以上のように、大手と地場の派遣会社にはそれぞれ利点と欠点が存在します。求職者にとって何を重視するかで最適な選択肢は異なります。では、実際に求職者はどちらを選ぶ傾向があるのでしょうか。次に、年代や属性別にその傾向を見てみます。

メリット デメリット
少人数制で個別サポートが手厚く、相談しやすい 大手に比べて求人案件数が少ない
地元優良企業やニッチな案件に強い 給与・福利厚生・研修制度が大手に比べて劣る
自宅から通える地元案件が豊富で、安心して働ける 知名度が低く、信頼性にばらつきがある(悪質な会社のリスクも)
応募倍率が低く、希望の仕事に就きやすい場合がある 口コミや評判を調べて見極めが必要

求職者層別の選択傾向

若年層(20~30代)の傾向

若年層の派遣求職者は、スキルアップやキャリア形成を重視して大手派遣会社を選ぶ傾向があります。研修制度やキャリア相談体制が整った大手で働くことで経験を積みたいと考える人が多いようです。また、全国規模の派遣会社は一部上場企業や大手メーカーなど大企業の求人案件も多いため、最先端の職場で経験を積みたい若者にとって魅力的です。実際、製造派遣でも大手派遣会社は大手メーカーの工場案件など取引先が幅広く、「安定して働ける求人や最先端技術の職場が見つかる」期待ができます。

加えて、若年層は比較的フットワークが軽く転居を伴う働き方にも抵抗が少ないため、全国どこでも働ける柔軟性を求めて大手に登録するケースもあります。同じ派遣会社のまま引越し先でも仕事を紹介してもらえる仕組みは、キャリアの途切れを避けたい若者にとって安心材料です。一方で、地場の派遣会社にも専門分野に特化した求人や手厚いサポートを求めて登録する若者もいます。ただし総じて見ると、「まずは求人数の多い大手に登録しておこう」と考える若年層が多い傾向が読み取れます。

中高年層(40代以上)の傾向

中高年層の派遣求職者は、大手と地場で選択が分かれる傾向があります。一般的に40代以降は派遣紹介が厳しくなると言われ、実際に「派遣法上は年齢制限NGでも、40代になると紹介される仕事が極端に減る」現実があります。

派遣会社によっては40代という理由で登録自体を断られるケースすらあり、競争の激しい大手ほど若年層を優先しがちな傾向が指摘されています。このため、中高年の中には大手への登録だけでなく地域密着型の派遣会社にも目を向ける人が少なくありません。

特に豊富な職歴や大手企業での経験を持つ中高年の場合、そのノウハウを買ってくれる地元企業を探すことで高い評価・待遇を得られるチャンスがあります。実際「大手企業での経験が長い人は地元密着型の派遣会社への登録もおすすめ」とされており、大手で培ったスキルを地域の中小企業で活かせば高時給で採用される可能性があるとの指摘があります。またシニア歓迎の求人に強い派遣会社(シニア専門や地域特化型など)を選ぶことで、ミスマッチを減らして安定就業できる中高年も増えています。

主婦層(主婦・主夫)の傾向

主婦層の派遣利用者は、働き方の柔軟性と勤務地を重視する傾向があります。子育てや家庭と両立するため「地元で働けること」が重要条件となるケースが多く、地場の派遣会社はそうしたニーズに応じた案件を紹介してくれるため人気です。実際「地元で働きたいと考えるなら、地元情報に詳しくきめ細かく対応してくれる地元の派遣会社の方が有利」との声もあります。家から近い職場や短時間勤務の求人は地域密着型の方が見つけやすい場合もあり、主婦にフィットしやすいと言えます。

一方で、収入や安定性を求めて大手派遣会社に登録する主婦も増えているのが近年の傾向です。従来は扶養内で地元パートという選択肢が主流でしたが、「高時給で各種保険にも加入できる派遣」に魅力を感じて登録する人が増えてきています。大手派遣会社なら社会保険や有給制度もしっかり利用でき、近所のパートより稼げるメリットがあるためです。また、配偶者の転勤があり得る場合は全国展開の派遣会社に登録しておくメリットが大きいです。夫の都合で引っ越す際も、同じ派遣会社のネットワークを通じて引越し先で新たな仕事を紹介してもらえれば継続就業が可能だからです。

なお、主婦層に関して興味深い声として、同じ派遣先企業の仕事でも地場の派遣会社経由の方が時給が高かったという事例があります。実際「地方の派遣会社と大手派遣会社で同じ派遣先だったが、地元の会社経由の方が時給で200円も高かった」という口コミがあり、条件面では必ずしも大手=有利とは限らないようです。このように主婦層では、自分の優先事項(勤務地重視か収入重視か等)によって大手と地場のどちらを選ぶか傾向が分かれます。家庭の状況や将来の転居可能性も踏まえつつ、両方の派遣会社の求人やサポート体制を比較して選ぶ主婦の方が多いようです。

製造業の企業目線:派遣会社を選ぶ7つの評価軸

求職者の傾向を踏まえたうえで、派遣会社を選ぶ際の企業側の評価軸は以下の7点に整理できます。

1.母集団形成力(応募数)

2.人材属性の適合度(希望に合う層が応募してくるか)

3.教育・研修体制(早期立ち上がり支援)

4.定着フォロー体制(3ヶ月・6ヶ月離職率)

5.拠点横断対応力(複数工場への同時展開)

6.コスト・契約の柔軟性

7.コンプライアンス体制(法令対応や是正件数)

これらを客観的に比較しながら選定を進めることが、生産性・安定稼働を左右します。

自社に合うパートナーを選ぶ“自己診断チェックリスト”

以下の設問に「Yes」が多ければ、全国型が向いている可能性があります。

  • 複数工場で同時に大量の人材を確保したい
  • 高度技能(PLC、NCなど)を持った人材を探している
  • 採用コストよりも離職・再教育のコストが痛い

一方、以下の設問に「Yes」が多ければ、地場型が向いている可能性があります。

  • 通勤圏内で定着重視の人材が欲しい
  • 夜勤専任や短期ピンポイント対応を重視している
  • 柔軟に現場事情を理解し動いてくれる担当者が必要

ハイブリッド運用という選択肢

現実には「全国型か地場型か」の二者択一ではなく、ハイブリッド運用が成果を最大化するケースもあります。

➢基幹工場での一括採用は全国型を重点的に活用

➢地域特性や工程単位では地場型を活用

➢双方に共通のKPI(定着率、不良率、稼働率など)を設け、データに基づくPDCAを回す

これにより、ミスマッチや機会損失のリスクを分散しつつ、最適な人材確保が可能になります。

まとめ

派遣会社選定は「形式」で選ぶ時代から、「成果が出るパートナー」を見極める時代へと変化しています。

本記事で紹介した比較軸やチェックリストを活用しながら、自社のニーズにマッチしたパートナー選定を進めてください。将来的な定着や生産性向上を見据えた選定が、最終的なコスト最適化・組織力強化につながります。

この記事の執筆者

フジアルテ株式会社 コラム編集室
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製造派遣・請負・人材採用に関するテーマを中心に、わかりやすく解説します。製造業の現場で役立つ実務的な情報をお届けしています。
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