派遣コラム
派遣スタッフとの協働をスムーズにする5つの工夫

製造現場で派遣スタッフと一緒に仕事を進める中で、「指示通りに動いてくれない」「新しいことを頼むと断られる」「距離が縮まらない」といった悩みは、どの現場にも起こり得ます。
こうした“すれ違い”の背景には、派遣スタッフならではの価値観や事情が隠れていることが少なくありません。
本記事では、実際の現場事例をもとに、原因と改善のヒントを5つの視点から整理しました。
Q.このコラムでは何が書かれているの?
A. 製造現場で派遣スタッフと協働する際によく起こる“すれ違い”の事例と、その背景にある要因、改善のための実践的なヒントを紹介しています。
Q.このコラムで最も大事なポイントは?
A.「行動の背景には必ず理由がある」という視点を持ち、派遣スタッフの価値観や事情を理解したうえで対策をとることが、現場のスムーズな運営につながるという点です。
① 言った通りに動かないと感じるとき
現場でのケース
「え、それって本当にやる必要あるんですか?」
新たな組立工程にAさんを割り当てた現場リーダーの田村さん。
指示通り作業内容を説明したが、Aさんからはこう返ってきた。
「自分、こっちのやり方のほうが早いと思うんで、変えていいですか?」
「それって…本当にやる必要あるんですか?」
前職で似た工程を経験していたAさんにとっては効率化のつもりだったが、
田村さんからすれば「指示を素直に聞かない人」と映ってしまった。
ここに隠れた背景
Aさんは前職で“効率化が評価される職場”に慣れており、
「成果を出せば手順変更も許される」という価値観を持っていました。
しかし現場では、安全・品質のため手順遵守が絶対条件。
双方の価値観のズレが、“指示を聞かない”という印象につながりました。
改善のためのヒント
- 新工程に入る前に「この現場での最優先事項」を明確に共有する
- 「改善案は歓迎するが、まずは決められた方法で実施後に相談」というルールを示す
- 前職経験者には「なぜこの手順が必要なのか」の背景説明を加える
② 新しいことや変化に抵抗感を示すとき
現場でのケース
「正直、もう自分のペースが崩れるのが怖くて…」
検査工程に長く就業していた派遣スタッフのBさん。
現場全体のスキル向上を図るため、別の工程も担当してもらうよう依頼したところ——
「…すみません、自分、今の作業で慣れてきたので、できればこのままで…」
管理者としては“成長機会”のつもりでも、Bさんにとっては「生活リズムを守ること」が優先度の高い価値だった。
ここに隠れた背景
派遣という働き方を選んだ理由のひとつに「安定した生活リズム」があり、
新しい工程は残業やシフト変更の可能性もあり、生活が乱れる不安がありました。
改善のためのヒント
- 配置変更の目的と本人へのメリットをセットで伝える
- 「どのくらい負担が増えるか」を具体的に説明する
- 初期は短時間や補助的業務から段階的に慣らす
③ 信頼関係がなかなか築けないとき
現場でのケース
「怒られたら評価が下がると思って…」
製造ラインでCさんが作業ミスを黙っていたことが発覚。
指摘すると、Cさんは「評価が下がると思って言い出せなかった」と答えた。
ここに隠れた背景
評価は契約更新や就業環境に直結するため、自己防衛の意識が働くことがあります。
改善のためのヒント
- 報告後は感謝と再発防止共有で締める
- 「報告で評価は下がらない」ことを制度や事例で示す
- 派遣元と連携し“報告=信頼”の文化をつくる
④ チーム意識が強すぎて全体と噛み合わないとき
現場でのケース
「ウチの組はもう終わってますんで」
D班は早く終わることを重視し、他工程応援の依頼を断った。
ここに隠れた背景
班ごとの達成感や早く終わるメリットを優先し、全体最適の視点が欠けていました。
改善のためのヒント
- 評価指標を現場全体の成果にも紐づける
- 他工程応援のメリット事例を共有する
- 班リーダーに全体最適の重要性を直接説明する
⑤ 派遣元に本音が届かないとき
現場でのケース
「言ったら職場で浮きそうで…」
Eさんは職場の人間関係に関する不満を営業担当には話さなかった。
ここに隠れた背景
立場の弱さを自覚し、発言による人間関係の悪化を避けようとする傾向があります。
改善のためのヒント
- 匿名意見収集を定期的に行う
- 営業担当が日常的に関係性を築く
- 管理者が「不満は改善のため」と発信する
まとめ
派遣スタッフとの協働における“すれ違い”は、単なる意思疎通不足だけでなく、働き方の選び方や過去の経験、評価制度への意識など、背景にある価値観や事情が深く関わっています。
現場の管理者がその背景を理解し、事前の情報共有や段階的な慣らし、報告しやすい環境づくりなどの工夫を行うことで、トラブルや誤解を減らし、派遣スタッフが力を発揮しやすい職場になります。
最終的には、「指示通り動かす」ことだけをゴールにするのではなく、
「お互いに気持ちよく働ける関係性」を築くことが、現場全体の成果や定着率向上につながります。
この記事の執筆者
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