1. 製造派遣社員にさせてはいけない業務とは?
    ~二重派遣・偽装請負について詳しく解説~

派遣コラム

製造派遣社員にさせてはいけない業務とは?
~二重派遣・偽装請負について詳しく解説~

派遣社員が働く際にさせてはいけない業務があります。
また、労働者派遣法で禁止されている業務のほかにも、現場で指示や管理を行う際に注意するべき事項とはどのようなものがあるのでしょうか。
意図せず派遣社員に任せていたことが実はさせてはいけないことだった、という事態を防ぎ、適正な運営を行うためのポイントについてもご紹介いたします。

派遣が禁止されている業務

労働者派遣法によって、労働者派遣が禁止されている業務があります。
派遣を依頼する際は、下記のような業務内容に該当していないかをまずは確認いただくことが大切です。

労働者派遣法で禁止されている業務とは

派遣が禁止されている業務は以下の内容です。

・港湾運送業務
・建設業務
・警備業務
・医療関係業務
※一部の条件を満たす場合は(紹介予定派遣等)、派遣することが可能です。
・弁護士や司法書士といった「士」業務

派遣依頼を検討する際は、まずはこういった業務が該当しないかを確認しましょう。
また、すでに派遣を活用されている場合においても、上記以外で派遣社員に業務を行って頂く際に、注意するべきポイントがあります。
後述では、その注意するべき内容をピックアップしご紹介していきます。

業務範囲にない仕事とは

派遣社員の業務範囲にない仕事を現場で任せてはいけません。
業務範囲とは、派遣元となる人材派遣会社と派遣先企業で取り交わした契約内容に記載のある業務のことです。
業務範囲外の仕事を任せることは、契約内容に違反することになります。
詳細な作業内容はもちろんのこと、補足事項や作業する内容に関わる情報については、派遣元となる人材派遣会社に漏れが無いように伝えることが重要です。
また、労働時間についても契約に定められている内容を守らなければなりません。

契約にない時間外労働・休日出勤

契約にない時間外労働や休日出勤を派遣社員に指示することはできません。
法定労働時間(1日に8時間、1週間に40時間)内で残業が発生する場合は、あらかじめ契約内容に記載する必要があります。
契約書に記載されていること、そして法定労働時間内の範囲であれば問題はありません。
しかし、法定労働時間外での残業や休日出勤が発生する場合には注意が必要です。

法定労働時間外で残業や休日出勤が発生する場合、派遣元となる人材派遣会社が36協定を締結し届出を行わなければなりません。
36協定とは、労働基準法第36条(時間外・休日労働協定)に基づく労使協定のことです。法定労働時間を超えて社員が時間外労働や休日出勤を行う場合は、
この協定を締結し、労働基準監督署に届出を行うことが義務付けられています。
協定で定めた範囲において、実際に派遣社員に仕事を任せる場合、勤務上発生する残業時間や休日出勤が契約内容に明記されていることが必要です。

ここで注意すべきポイントとして、36協定を締結・届出を行うのは「派遣元となる人材派遣会社」であるということです。
派遣先企業の36協定が適用されるわけではありません。そのため、派遣先企業は事前に派遣元の人材派遣会社が締結した36協定の内容をしっかりと
把握しなければなりません。派遣社員は締結された36協定の範囲内で業務に従事することができます。36協定で定める範囲を超えた場合、派遣先が「労働基準法違反」となってしまいます。派遣元での36協定の締結内容の確認と契約内容の確認を合わせて行うようにしましょう。

36協定等関連する具体的なQ&Aをこちらでもご紹介しています。ぜひご覧ください。
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労働者の安全を確保するための日雇い派遣の規制

2012年の労働者派遣法改正以降、日雇い派遣の原則禁止が施行されました。この措置は、派遣元と派遣先双方による雇用管理責任の不在と、労働災害を引き起こす
可能性を踏まえたものです。派遣社員の労働環境の安全性を守るため、派遣元との雇用契約は最低でも31日以上が求められています。

たとえば、1週間の派遣契約を派遣元と派遣先A社間で結んだ場合でも、派遣元との雇用契約期間が3か月ある派遣労働者の派遣は許されます。
しかし、働かせる意図が2週間しかないのに31日以上の雇用契約を締結し、その期間のうち2週間だけ派遣する行為は違法とされています。

【日雇い派遣の例外条件】
・ソフトウェア開発や機械設計、添乗や研究開発など、政令で指定される業務の派遣
・60歳以上の個人
・雇用保険の対象外である学生
・副業として日雇い派遣に従事する人
・主な生計者ではない人
以上の条件を満たす場合、30日以内の日雇い派遣が可能となります。

派遣社員の適正な部署移動の要件

派遣社員の部署移動は基本的に禁じられています。契約書に記載のない部署や営業所での労働は、契約違反となります。しかし、以下の条件を満たせば部署移動は
可能となります。

・派遣社員と派遣先双方が合意している
もし派遣社員と派遣先が合意すれば、労働派遣契約の内容を変更することが可能です。そのため、派遣社員の合意がなければ、会社都合による部署移動は許されません。
・契約期間が満了している
派遣社員の派遣期間は、原則として1ヵ月以上3年以内と労働者派遣契約で定められています。契約期間が満了し、新たに契約を結び直す際には、部署移動が
可能となります。

二重派遣・偽装請負に注意

派遣先企業が別の会社に派遣社員を派遣し業務を任せることは「二重派遣」となり、「職業安定法第44条」等の法律に違反する行為となります。
また、請負契約を結んでいる場合、発注者となる企業が指揮命令をすることは「偽装請負」となります。こちらについても違法行為にあたるものです。
意図せずにこういった形態になってしまわないようにするためにも、「指揮命令関係はどこにあるのか」という認識をしっかりと持っておくことが大切です。

二重派遣とは

派遣元の人材派遣会社と派遣先企業は派遣契約を結んでいます。締結した契約で定めている業務については、「派遣先企業」の指揮命令のもとで派遣社員は派遣先にて
業務に従事します。派遣先企業が、また別の会社に派遣スタッフを派遣し、そこで指揮命令を行うことは「二重派遣」となり、派遣契約を結んでいない会社が派遣社員に
業務を指示している、という形は法律違反となります。

偽装請負とは

「請負」とは、請負を行う会社と企業が契約を結び、企業に対して成果物の完成を約束する契約です。
派遣の場合は、派遣契約のもとで派遣先企業が指揮命令をとります。しかし、請負の場合、「請負を行う会社」が指揮命令を行います。
発注企業と請負スタッフの間に指揮命令の関係はありません。

「偽装請負」とは、請負の形態を取りながら、発注側の企業が請負で働くスタッフに対して指揮命令を行うことです。
発注側の企業が指揮命令を行うことは、実態として派遣と変わりないものであり、法律に違反する行為となります。

適正な運営を遂行するために注意するべきポイント

派遣社員にさせてはいけない業務を任せてしまっていた、という事態を防ぐためにはどうすればいいでしょうか。
適正な運営をするためには次のポイントに注意が必要です。

①契約内容で定めた業務範囲であるかどうか

派遣社員が業務に従事する内容は、派遣契約にて定められている内容でなければなりません。
発生する業務内容のほかにも、派遣先の責任者や指揮命令者、勤務時間や福利厚生等においての記載が必要となります。
派遣社員の受け入れ前に、まずは業務内容や就業条件の内容を確認し、間違いがないか、記載できていない部分はないかという視点をもってチェックしましょう。
受け入れ後に、別の業務が発生する場合は契約内容を更新した上で、業務を任せるようにしましょう。

②関係者への業務範囲の周知徹底

契約で定めた業務内容を行うためには、派遣先企業での周知の徹底がとても重要なポイントになります。
実際に指揮命令を行うメンバーだけではなく、関係するメンバー全員が派遣社員の就業条件や業務内容を理解することで、
「契約範囲外の仕事をさせてしまっていた」といった状況をなくすことができます。
巡回の際は、日々の作業内容が契約内容に沿ったものであるかどうかという視点を持って行うことも大切です。

派遣元とのこまめな共有を行いましょう

派遣社員が適正な業務範囲内で働くためには、派遣元となる人材派遣会社との連携が必要不可欠です。
「契約内容と違う作業を任されている」、「契約にない時間外労働が発生している」といった問題が発生しないよう、派遣元と派遣先が協力して
情報共有を行うことができる協力体制を作るようにしましょう。

まとめ

派遣社員にさせてはいけない業務は労働者派遣法で定められている内容だけではありません。
業務範囲外の内容を任せてしまわないように、契約内容を締結する際の確認や定期的な見直しを図ることでも未然に防ぐことができます。
少しでも迷ったことや気になることはすぐに人材派遣会社へと相談いただくこともおすすめです。

派遣先は、派遣労働者の労働時間をどこまで管理しなければいけないのか?
年次有給休暇を全従業員が5日取得するためにはどんな管理方法がある?」といった
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