1. 36協定で定める限度時間を越えるとすぐに罰則が適用になるのか 派遣労働者の時間外労働の管理責任は、派遣先と派遣元どちらにあるのか

労務管理Q&A

2023.02.27

36協定で定める限度時間を越えるとすぐに罰則が適用になるのか 派遣労働者の時間外労働の管理責任は、派遣先と派遣元どちらにあるのか

ご質問内容

令和5(2023)年4月から、月60時間を超える法定時間外労働に対し5割の割増賃金を支払うことが、中小企業も義務となります。
このことから36協定に注目が集まっていますが、どのような違反に対して罰則が適用されるのですか。

専門家からの回答

世間では「36協定違反には罰則がある」との認知が高まっていますが、具体的には労働基準法第13章に定められた事項についてのみ罰則が適用されます。
なお、労働者派遣の場合は、派遣先を「派遣労働者の使用者」とみなして罰則を適用する条文があるので、派遣先は注意が必要です。

労働基準監督官は特別司法警察職員

警察官(一般司法警察職員)ではないのですが、特定の法律についてのみ、刑事訴訟法に基づく犯罪捜査の権限がある公務員のことを特別司法警察職員といいます。労働基準監督官は、労働基準法違反について、警察官に頼ることなく自ら捜索差押や送検の手続を行うことができる特別司法警察職員です。

捜索差押や送検の手続

これに対して行政事務職員は、行政指導はできるものの刑事訴訟法に基づく捜索ができないため、例えば雇用調整助成金の不正受給を発見した場合は警察署に告発し、不正受給をした事業主を警察官に捜査してもらうことになります。
労働基準法には罰則(懲役または罰金)が定められていますが、労働基準法違反の全てに罰則が適用されるのではなく、罰則が適用される条文も全て労働基準法の中に定められています。
また、罰則の有無にかかわらず、違反事項は行政指導の対象になります。

36協定で罰則が適用される事項

労働基準法第3章第119条では6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が適用される条項を定めていますが、36協定については第36条第6項に違反した場合にこの罰則の適用を受けると定められています。
 第36条第6項は、以下の表のとおり「過重労働防止ルール」に関する定めです。

過重労働防止ルール一覧

労働者派遣の場合は、派遣先を使用者とみなし罰則適用

派遣労働者は派遣先事業所で労働しているので、派遣先を労働基準法上の使用者しみなして適用するという特例があります。
36協定では、第36条第1項(36協定未締結では法定時間外労働や休日労働を命じられない旨)及び第6項(上記の過重労働防止ルール)について、派遣先を使用者とみなし、「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」も派遣先に適用します。
労働者派遣法第44条第3項では、「派遣先が第36条第6項に違反する時は労働者派遣をしてはならない。」と定めていますので、派遣元事業所としては派遣先の違反を把握すると、労働者派遣を中止せざるを得ません。

誤りは素直に認めて是正し、改ざんしないこと

なお、労働者派遣法第120条第1項第4号では「労働基準監督官の臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者は30万円以下の罰金に処する」と定めていますので、例えば36協定の限度時間を超えたにもかかわらず、限度時間内で労働されていたように賃金台帳に記載する労働時間を改ざんした場合は、この罰則の適用を受けることになります。
労働基準監督官はいきなり使用者を送検せず、まずは文書で行政指導し、是正・改善を確認すると指導は終了します。記録を改ざんすると、かえって罰則適用となりますので、現場にも「正直に実際の労働時間数を報告して」と徹底しておきましょう。

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