1. 派遣先は、派遣労働者の労働時間をどこまで管理しなければいけないのか?

労務管理Q&A

2021.07.30

派遣先は、派遣労働者の労働時間をどこまで管理しなければいけないのか?

ご質問内容

このほど、派遣労働者を受け入れている同業他社の工場に労働基準監督署の臨検が入りました。

その際、派遣労働者の労働時間を料金請求ベースの15分単位で記録していたことについて、労働基準監督官より「もっと正確に把握するように」と指導があったそうです。

派遣先は、派遣労働者の労働時間をどこまで正確に把握しなければならないのでしょうか。

専門家からの回答

派遣先は、自社で雇用する労働者と同じ考え方と水準で派遣労働者の労働時間を管理する必要があります。

派遣労働者は派遣先で就業しているため、派遣元事業主が派遣労働者の労働時間を管理することは困難です。このため、労働者派遣法において、労働基準法第32条(労働時間の定めの条項)の「使用者」を特別に派遣先に読み替えて適用するというルールを設けているのです。

派遣先が派遣労働者の労働時間を把握し記録するのは、派遣料金請求のためだけではないのです。

■ 派遣先を「使用者」とみなす労働基準法の労働時間関係条項(抜粋)

労働基準法の労働時間に関する以下の条項は、派遣労働者の就業に限り、派遣先の事業を「派遣労働者を使用する事業」とみなして、罰則も含めて適用します。

条 項内 容

第32条 労働時間は1日8時間、週40時間以内が原則
第32条の2、3第1項
第32条の4第1~3項
1か月単位変形労働時間制、フレックスタイム制、
1年単位変形労働時間制
第33条 非常災害時の時間外労働
第34条 休憩の付与
第35条 毎週1日、または4週間に4日以上の法定休日の付与
第36条第1項 派遣元の36協定の範囲内で時間外・休日労働が可能
第36条第6項 「時間外労働+法定休日労働」の合計は1か月100時間未満、かつ2~6か月の平均は月80時間を超えない

■ 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する指針(ガイドライン)

厚生労働省は、平成29(2017)年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する指針」を制定しました。

指針とは、法律上の義務を実行するための実務基準を定めたものです。
すなわち、労働基準法第32条には「労働時間を1日8時間以内とするよう」定めていますが、その労働時間の計測の仕方については具体的に定めていません。
指針では、その計測と記録の実務を以下のように定めています。

使用者は労働日ごとに始業・終業時刻を把握し適正に記録しなければならない。
原則的な方法は以下のいずれかとする。
使用者が自ら現認
タイムカードやICカード、PCの記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること

で「客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録する」という表現になっているのは、「タイムカード等の打刻=始業・終業時刻」と決めつけず、それをもとに「打刻前や後に実は把握できていない労働時間がなかったか」という確認も行って、実際に把握した労働時間を記録すべきである、という行政の考え方をあらわしています。
したがって、派遣労働者も、派遣先で雇用する労働者と原則として同様の方法で上記に従い労働時間を計測して記録することが求められています。
以上は派遣料金とは関係なく、労働基準法上の義務として実施しなければなりません。

■ 派遣先管理台帳記載事項を、定期的に派遣元へ通知する義務
労働者派遣法第42条では、派遣先に派遣先管理台帳の作成と必要事項の記録を求めていますが、派遣労働者の労働時間も当該台帳に毎月記録すべき内容となっています。一般的に台帳に書ききれないためタイムカード写で管理している例が多いでしょう。
派遣先は、毎月、派遣先管理台帳の一定の事項と併せて派遣労働者の労働時間の記録を派遣元事業主に通知する義務があります。
派遣料金請求のために通知は行われていると考えられますが、以下の必要事項も一緒に派遣元に通知されているでしょうか。今一度、ご確認下さい。

画像:派遣先管理台帳記載事項を、定期的に派遣元へ通知する義務

監修:田原咲世 氏(北桜労働法務事務所 社会保険労務士)

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