1. 派遣と請負の違いとは?

派遣コラム

2023.11.15

派遣と請負の違いとは?

従業員との業務委託契約には「派遣」と「請負」があります。
今回の記事では、派遣契約と請負契約の違いや、メリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。

派遣と請負の違いとは?

「派遣契約」と「請負契約」の間にはどんな違いがあるのでしょうか?
簡単にまとめてご紹介していきます。

派遣とは

派遣とは、企業と派遣会社が労働者派遣契約を結び、その派遣会社から人材を派遣してもらう契約形態です。
発注企業は、派遣された人材に対して指揮命令を行って労働力を確保します。雇用期間には法律上の期間制限があり、報酬は「労働力」に対して支払われるようになっています。

請負とは

請負とは、企業が請負会社と請負契約を結び、請負会社から「成果物」を納品してもらう契約形態です。
報酬は成果物に対して支払われ、契約期間などは定められていません。派遣とは違い、その成果物にどれだけの支払いをするのかという考え方です。

民法では請負を以下のように定義しています。
「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法632条)」

派遣と請負の違い

目的の違い

派遣契約と請負契約では、目的に対する違いがあります。
派遣契約の場合、人手が足りないところに派遣社員を入れて充足させることが目的といえます。
一方の請負契約では、成果物(完成品)を納品することが目的となっています。
「この成果物を〇〇〇円で納品してほしい」というオーダーを請負会社が受け、その納品物に対して報酬を支払うことになっています。
どれだけの時間を費やして成果物を完成させたのか?ということは、請負契約では加味されないのが特徴です。

指揮命令権の違い

派遣契約と請負契約では、指揮命令権の所在も異なります。
派遣契約では、派遣労働者と雇用契約を結んでいるのは派遣会社ですが、現場での指揮命令権は発注企業が持っています。
ただし、報酬の支払いは派遣会社が行うため、仕事の指示を出すところと、報酬の支払元が異なる契約となっています。
請負契約では、指揮命令権は請負会社が持っていて、作業の指示を出すのは請負会社です。
労働者と雇用関係を結んでいるのは請負会社であり、
報酬の支払いが請負会社から労働者に支払われるため、シンプルな雇用形態とも言えます。

契約形態の違い

「派遣」と「請負」の契約形態の主な違いは、下記のとおりです。
「労働者派遣契約」では、派遣会社が正式に雇用した従業員を他の企業に派遣します。この場合、派遣される従業員は派遣会社の指示に従いつつ、
派遣先企業が定めた特定の業務を行います。派遣契約の期間は通常、数ヶ月単位で事前に設定され、契約終了後は従業員が派遣会社に戻るか、
新たな派遣先へ移動します。
一方で、「製造請負契約」は成果物の提供を目的としています。ここでの契約は、請負業者が特定の成果物やプロジェクトの完成を約束し、依頼企業は
その完成した成果物に対して報酬を支払うというものです。民法第632条に基づき、「請負人が完成させた仕事に対し、発注者が報酬を支払う」
という契約関係が成立します。
この場合、成果物を納品することを目標としているため、成果物を納品する「納期」が事実上の契約期間になります。
両者の主な違いは、派遣契約が人材の提供に焦点を当てているのに対し、請負契約は特定の成果物やサービスの提供に関連している点です。
また、派遣労働者は派遣会社の指示に従いつつ派遣先の管理下で働くのに対し、請負業者は独立して成果物を完成させる責任を負います。

労働法が適用されるかどうか

派遣契約と請負契約の間では、労働法が適用されるかどうかも異なるポイントです。
派遣契約では派遣労働者に労働法が適用されますが、請負で業務委託をしている場合には労働法は適用されません。
労働法とは、雇用されている人を守るための法律で、請負で業務委託をしている労働者と発注企業は雇用契約ではなく請負契約を結んでいるため、労働法の対象にならないのです。

派遣のメリット・デメリット

派遣社員を雇用すると、様々なメリットがあります。具体的に見ていきましょう。

派遣のメリット

必要な人材を必要な期間だけ使うことができる

請負にも共通するメリットですが、派遣では必要な人材を必要な期間だけ雇用できます。
例えば、業務量が時期によって異なる場合などは、特定期間のみ人材が必要というケースもあります。
そのような場合に、増産時に人材を半年間だけ雇い入れるということが可能です。

自社の方針・方法で業務を指揮できる

派遣契約では発注企業に指揮命令権があるので、発注企業から派遣社員に直接指示が出すことができます。
自社の業務をよく理解している自社社員が指示を出した方が、ムラや無駄を発生させることも防ぎ、業務を効率的に進めることもできます。
また不測なトラブルが発生した場合でも、自社社員が直接指示をして対応することができます。

派遣のデメリット

指揮命令のコストがかかる

派遣社員を雇用すると、指揮命令を行うのは発注企業です。
派遣社員に業務を遂行してもらうためにも、指示が出せる人材を常に確保しておく必要があります。
また管理業務の負担も増え、管理監督に人材を確保する余裕がない企業にとっては大きなデメリットになります。

教育コストがかかる

派遣社員を雇用すると、作業内容に対して知識がない事が多いため、研修や教育などにある程度の時間と労力が必要です。
きちんと仕事を覚えて業務をこなせるようになるまでは、育成コストを考えておかなければいけません。
また、仕事を覚えてもらっても契約期間の満了が待っています。
契約更新という形で優秀な人材を継続して雇用することも可能ですが、本人側がそれを望まなければ更新はできません。
そのため社内にノウハウとして蓄積されにくいのも派遣社員のデメリットでしょう。

請負のメリット・デメリット

請負で労働者と契約すると、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?いくつか見ていきましょう。

請負のメリット

教育コストを削減できる

請負で契約を結ぶと教育コストを削減できるメリットもあります。
請負の労働者には成果物に対しての報酬を支払うのみですので、発注企業から教育を行う必要がありません。
研修や教育を行う手間が省かれるため、教育コストを削減することが出来るでしょう。

指揮命令のコストを削減できる

請負で業務委託をした際には、指揮命令のコストを削減できるというメリットがあります。
請負の労働者の場合、指揮命令権を持っているのは、請負会社です。
発注主には指揮命令をする権限が無いため、指揮命令のコスト負担削減に繋がります。
社員を雇用するコストを考えると割安に業務委託が出来るでしょう。

請負のデメリット

直接的な業務指示ができない

指揮命令を行う事は請負会社にしか許されていません。
管理の手間が省けるという点ではメリットですが、指示ができない分、業務の進み具合が見えずらいというデメリットがあります。
適切な業務報告を行ってくれる請負会社を選ぶ必要があります。
またトラブルが発生しても直接指示することはできず、
万が一、指示をしてしまった場合は違法となり罰則対象となるので注意が必要です。

ノウハウや技術が会社に蓄積されない

請負で業務委託すると、自社社員の業務負担は軽減される一方で、社内の業務のノウハウや技術は蓄積されていかないという側面があります。
ただし、契約内でレポートの作成や定期的な報告をさせることは可能で、それを通じて作業全体の流れを共有することは出来ます。

派遣か請負か、選ぶ基準

派遣、請負はそれぞれに一長一短のメリット・デメリットがあります。どんなところに気を付けて選んでいけばいいのでしょうか。

指揮命令権が必要かどうか

現場での指揮命令権が必要かどうかは、派遣にするか請負にするかで注意すべき点です。
製造業務では、突発的なアクシデントが発生してしまう事もあります。
そうした時に、派遣契約を結んでいればアクシデントにも対応できる命令を下せますが、請負契約では指揮命令権が請負会社にあるため、臨機応変な対応がしにくいこともあります。成果物出来上がりの精度が重視される仕事に対しては、請負の方が効率的でしょう。

第三者の視点を求めるかどうか

派遣と請負を比べた際に派遣労働者であれば、発注企業のノウハウで仕事を進めていくことでしょう。
その場合、派遣社員は指揮命令を待って仕事に取り掛かるため、第三者的な視点で物事を見られなくなっていきます。
一方、請負の業務委託で仕事をする人材は請負会社によって指示命令がなされるため、社内の従来のやり方では出てこなかった新しい着想が生まれ多様化の機会につながる可能性もあります。

どれくらい予算があるか

派遣社員と契約を結ぶと、契約期間中は賃金の支払いが発生します。
長期的に契約していると、相応の負担になってくるでしょう。
一方の請負で契約すると成果物に対しての支払いのみなので、各種保険など労務面の支出を抑えられる場合もあります。
自社の予算に応じて、派遣と請負を使い分けましょう。

契約時の注意点

実際に契約を結ぶ際、注意しなければならない事項があります。どんなところに注意をして契約を結べばいいでしょうか?簡単にご紹介いたします。

派遣における注意点とは?

労働者派遣契約は、労働者派遣法による規制があります。以下のような点を注意しましょう。

派遣受入れ前の面接は禁止

労働者派遣法では、事前面接等の実施に関して、規制を設けています。
派遣社員に面接を実施後、採用の可否を決め、雇うのは派遣元会社です。
労働派遣法第26条第7項より、「派遣先は、(紹介予定派遣を除き)派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」とされています。
また、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」には「派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止」という項目を設けて、派遣労働者に面接を行なったり、派遣先に履歴書を送る行為、若年者に限定する場合を除き、派遣労働者を特定する目的での行為は禁止されています。

派遣禁止業務に該当しないか

労働者派遣法により、職務内容の専門性や危険性の高さ、雇用が安定しないなどの理由により禁止されている業務があります。
詳しい内容については『製造派遣社員にさせてはいけない業務とは?~二重派遣・偽装請負』について詳しく解説~をご覧ください。

派遣元会社は労働者派遣事業の許可を有しているか

労働者派遣法により、許可を受けていない”無許可事業主”から派遣労働者を受け入れることは、労働者派遣法によって禁止されています。

適正な許可のある派遣事業主か確認する方法
◇派遣元に対し許可証の写しの提出を求めて、派遣元の許可番号を確認する
◇派遣契約書で、派遣元の許可番号を確認する

許可を得た労働者派遣事業主には「労働者派遣事業許可証」が交付され、許可番号が付与されます。
<許可番号の例> 派27-300012
※「派」で始まる2桁-6桁の番号です

請負における注意点とは?

製造請負契約では、「偽装請負」に注意しましょう。
「偽装請負」とは、請負の形態を取りながら、発注側の企業が請負で働くスタッフに対して指揮命令を行うことです。
発注側の企業が指揮命令を行うことは、実態として派遣と変わりないものであり、法律に違反する行為となります。
以下のような点が当てはまる場合、偽装請負の可能性があります。

労働者に業務に関する指示・管理・評価をしている

発注元である企業が、労働者に直接指揮命令をし、選定・評価を行っている場合、偽装請負の可能性があります。
しかしながら、指示や管理・評価があるからといって、必ずしも偽装請負になるとは限りません。契約内容や労働条件など総合的に判断する必要があります。

労働者に勤務時間・休憩・休日の指示や管理をしている

発注元である企業が、労働者の始業および終業の時刻の延長や、休日に労働させる場合における指示、その他の管理を行って場合、偽装請負の可能性があります。
労働者の勤務時間や休憩・休日の決定権は委託先企業にありますので、注意が必要です。

業務に必要な備品や資金を支給している

業務に必要な備品や資金を支給すること自体は、請負において一般的な行為です。
ただし、もし発注元である企業が労働者に対して業務に必要な備品や資金の支給を通じて、実質的に業務内容や方法に関与し、労働者の自律性を奪っている場合、偽装請負とみなされる可能性があります。

労働者に対して作業方法や手順の指示を一切行わず、単なる肉体的な労働力の提供を受けている

労働者が単純な肉体労働力の提供を受けており、業務内容や方法に関与していない場合、偽装請負と判断される危険性があります。
具体例としては、労働者に対して作業方法や手順の指示を一切行わず、単純な労働力の提供に留まっている場合、単なる肉体労働力提供と見なされる可能性があります。

まとめ

今回は派遣と請負の違いを詳しく解説してきました。
派遣と請負は似た雇用形態に見えますが、実際には契約内容は大きく異なります。
両者の特性をきちんと把握したうえで、会社規模や課題に合わせて使い分けていきましょう。
★当社フジアルテの派遣について詳しく知りたい方はこちら
★当社フジアルテの請負について知りたい方はこちら
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