1. 「聞いてくれればよかったのに」が手遅れになる前に派遣スタッフ管理で本当に必要な関わり方

派遣コラム

2025.12.26

「聞いてくれればよかったのに」が手遅れになる前に派遣スタッフ管理で本当に必要な関わり方

部品製造メーカーA社では、人手不足への対応として製造派遣を活用しています。

ある日の現場で、少し手が空いていた派遣スタッフに対し、ラインの班長がこう声をかけました。
「今、こっちの工程が立て込んでいる。しばらく手伝ってもらえないか」

使用する設備について簡単に操作方法を説明したあと、
班長は「問題なさそうだ」と判断し、別の工程の対応に向かいました。

派遣スタッフは1人で作業を続けていましたが、途中で設備の動きに違和感を覚えます。

「このまま稼働させていいのだろうか……」

判断に迷いながら確認しようとした結果、誤って可動部に触れてしまい、指を負傷してしまいました。
幸い軽傷で済みましたが、管理体制次第では重大災害につながりかねない事例です。

人事・労務・工場管理の立場で考えるべき論点

このようなケースに対し、

  • 契約外の業務をさせたのではないか
  • 派遣法の理解が足りなかったのではないか

といった点が真っ先に思い浮かぶかもしれません。
もちろん、派遣契約や業務範囲の把握は重要です。
しかし、本事例で本当に問われるのは、製造現場の技術や管理ノウハウそのものではありません。

核心は「安全配慮義務」と「派遣スタッフへの関わり方」

製造現場の管理体制や工程設計については、多くの製造業の企業様がすでに高い専門性をお持ちです。
一方で、派遣スタッフの活用において重要になるのが、「派遣スタッフという働き方を前提とした管理・関わり方」です。

本事例の本質的な問題は、次の3点に集約されます。

  • 作業内容が変わったにもかかわらず、安全面の説明が十分でなかった
  • 不慣れな設備作業を、派遣スタッフ1人に任せてしまった
  • 判断に迷った際の相談先・フォロー体制が明確でなかった

これらはいずれも、派遣先企業、特に現場の指揮命令者が負う安全配慮義務・監督義務に直結します。

作業変更時の安全教育は、派遣先の管理責任

労働安全衛生法では、作業内容を変更する場合には、安全・衛生に関する教育を行うことが求められています。

派遣スタッフであっても、実際に業務を指示・管理する派遣先(指揮命令者)が、この義務を負います。

  • 「以前似た作業をしていたから大丈夫」
  • 「簡単な操作だから問題ない

といった現場感覚だけでは、法的に求められる安全教育を行ったとは評価されません。
特に製造現場では、

  • 危険箇所の明示
  • 異常時の対応ルール
  • 判断に迷った際の行動指針

を、事前に・具体的に伝えることが不可欠です。

派遣スタッフ管理で重要になる「相談できる環境」

派遣スタッフは、

  • 人間関係の距離感
  • 指示の受け方・確認の仕方
  • 正社員との立場の違い

などから、疑問や不安を感じていても自分から声を上げにくい立場にあります。

そのため、受け入れ時点で、

  • 指揮命令者とは別に、職場で相談しやすい キーパーソン(社歴の長い社員、面倒見の良い先輩など) を決め
  • 「困ったことがあれば、この人にも相談していい」

とあらかじめ派遣スタッフに伝えておくことは、派遣スタッフ管理において非常に重要です。

これは業務指示の範囲を超えた行為ではなく、派遣スタッフが安心して働くための環境整備であり、結果としてトラブルや離職の防止にもつながります。

「意図的な声かけ」が事故と定着を分ける

派遣スタッフは、配属直後の一定期間、正社員以上に不安を感じやすい傾向があります。

  • この判断で合っているのか
  • 忙しそうな中で聞いていいのか
  • 自分の理解が間違っていないか

こうした迷いから、分からないことを抱え込んでしまうケースも少なくありません。
そこで重要になるのが、指揮命令者や現場責任者による意図的な声かけです。
例えば、

  • 「困っていることはない?」
  • 「今の作業、やりにくくない?」
  • 「無理していない?」

といった一言を、意識して投げかけるだけでも、
派遣スタッフの心理的ハードルは大きく下がります。
特に慣れないうちは、指揮命令者から声をかけてもらえること自体が安心材料になります。
その結果、

  • 早めの相談が可能になる
  • ミスや事故の芽を早期に摘める
  • 職場への馴染みが早まる

といった好循環が生まれます。

派遣法の理解だけでは、現場リスクは防げない

派遣契約の管理や指示系統の整理は、人事・労務として欠かせない業務です。
しかし、現場で起きる事故やトラブルは、契約管理だけでは防げません。
製造現場では、作業を任せる瞬間、配置を変える瞬間にリスクが集中します。

だからこそ、人事・労務・工場管理の立場としては、

  • 指揮命令者が派遣スタッフを適切にフォローできているか
  • 現場判断に任せきりになっていないか

を点検する視点が重要になります。

派遣スタッフが安心して力を発揮できる現場へ

派遣スタッフが安全に、安心して働けるかどうかは、現場の指揮命令者の関わり方に大きく左右されます。

  • 相談先を明確にする
  • 意識的に声をかける
  • 不安を抱え込ませない仕組みをつくる

こうした「派遣スタッフ管理」の工夫があってこそ、派遣スタッフは能力を発揮し、現場の安定につながります。
製造派遣を継続的に活用していくためには、製造技術とは別の視点でのマネジメント設計が欠かせません。

まとめ 派遣スタッフ管理で重要なのは「関わり方の設計」

製造現場の管理そのものは、多くの製造業の企業様が高い専門性をお持ちです。
一方で、派遣スタッフを受け入れる際には、派遣スタッフ特有の管理視点が欠かせません。

作業変更時の安全配慮に加え、

  • 相談できるキーパーソンを事前に示す
  • 指揮命令者が意図的に声をかける

といった日常的な関わりが、派遣スタッフの不安を軽減し、事故防止や定着につながります。

派遣法や契約管理の理解だけでは、現場リスクは防げません。
派遣スタッフが安心して働ける環境をどう設計するか、その視点が、製造派遣を安定的に活用するためのカギになります。

この記事の執筆者

フジアルテ株式会社 コラム編集室
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製造派遣・請負・人材採用に関するテーマを中心に、わかりやすく解説します。製造業の現場で役立つ実務的な情報をお届けしています。
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