派遣コラム
製造業における品質管理に有効なQCサークル活動とは
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企業の存続にとって最も重要なことは顧客に質の高い製品やサービスを提供することです。製造業においても同様に、質の高い製品を期日通りに顧客に提供することが、会社の発展や存続に大きく関与します。そのため、製造現場では各工程で品質向上や、生産性向上に向けた取り組みを行っています。
今回は製造業において、品質管理に有効なQCサークル活動の基本的な考え方や、進め方を解説しています。陥りやすい失敗や、過去の事例も紹介しているので、これからQCサークル活動の実施を検討されている方や、既にQCサークル活動を実施している方に参考にして頂ければと思います。
初めに
QCサークル活動とは
まず初めに、QCとはquality(品質) control(管理)の略で、QCサークル活動とは、同じ職場内でグループを構成し、自発的に品質管理(QC)に関わる取り組みを行う活動を指します。QCサークル活動は、古くから品質向上や、生産性向上に有効な手段と言われていますが、QCサークル活動が及ぼす効果はそれだけではありません。
スタッフの人材育成や、職場の活性化にも大きく寄与します。QCサークル活動は、チームでの活動がメインだと思われがちですが、実は活動の大半は個人での活動であり、個人の能力を寄せ集めることで、QCサークル活動は大きな成果を生み出します。
このように、スタッフ個人の自主的な取り組みを促すQCサークル活動は、人材育成に大きく寄与します。また、全社一丸となって、QCサークル活動に真剣に取り組むことは、スタッフの能力向上に繋がり、職場の活性化においても大きな成果をもたらします。
日本におけるQCサークル活動
日本で最初にQCサークルが誕生したのは、戦後の復興期を終え順調に経済が成長していた1962年4月です。このころから日本では、全社的な品質管理の必要性が浸透してきました。
製品の品質管理は検査だけでは不十分であり、設計部門や購買部門など各工程が一丸となって品質管理を行うことで、不良品の削減や納期厳守が可能であるという考え方が主流となりました。
当時は品質管理についての書物やデータがごくわずかでしたが、品質管理の効果を上げるためには、全社的な品質管理への深い学びと実践が必要でした。そういったなかで、さらに品質管理を勉強したいという製造職場の人たちの強い要望から、(財)日本化学技術連盟によって、1962年4月『現場とQC』が創刊されました。これにより、製造業を筆頭にQCサークル活動が普及しました。
QCサークル活動の3つのメリット
このようにして日本に浸透したQCサークル活動ですが、実際にどのような効果が得られるのでしょうか?
今回はその中でも3つのメリットについてご紹介します。
品質向上
1つ目は製造業における「品質向上」です。
ここで言う品質向上には、2つの意味があります。
まず『製品』の品質向上です。
製品の品質とは、製造現場で製造された成果物の品質そのものを指します。そもそもQCサークルは、実際に現場で働く第一線職場の人たちの生の声を品質管理に生かそうという活動であり、実際に働いているスタッフだからこそわかる生産工程の改善点を洗い出し、技術部門など各部門に共有し、改善をし続けることにより品質向上が可能になります。
次に『業務』の品質向上です。
製造業において良品を作ることは大切ですが、費用や時間といったコストがかさんでしまっては利益が見込めず、存続の危機に陥ってしまいます。そこでQCサークル活動では、実際に現場で起こっている事実を把握しプロセスやルールの改善活動を行います。現場で働くスタッフが不便を感じていることこそ『業務』の品質向上において重要です。
例えば、『作業台の高さが低く作業しづらい』などの意見です。こういった意見はなかなか業務に反映されづらいといったことがあります。しかし、現場スタッフの『生の声』に耳を傾け、改善策を実行することこそ業務効率の向上に寄与します。また、こうした改善をマニュアル化することにより、業務を標準化し、継続的なプロセス管理を行うことで、業務効率の向上が期待できます。
人材育成
2つ目は「人材育成」です。
本来人間は自己の能力を発揮したいという欲求を持っています。そのためには自己の能力を高めることが必要です。QCサークル活動は、人から言われてやるのではなく、自ら進んで問題意識を持ち、改善のために試行錯誤するといったような自主的な活動が求められます。
製造現場で生じる問題を解決するためには、業務上の専門的な知識やノウハウだけでなく、時には既存の考えにとらわれない独創的な考えも求められます。また、一人では解決できない大きな問題も、メンバー全員の知識や、能力を集結することにより大きな力を発揮し、解決することができるのです。QCサークル活動を通したこのようなメンバー全員の積極的な活動が、生産性や品質の向上という結果に繋がります。また、結果の創出によりメンバーの業務意欲が高まることで、自己の能力が向上し、
業務の可能性が広がります。
職場環境の改善
3つ目は「職場環境の改善」です。
企業は、従業員に良い職場環境を提供する義務があります。一見円満に思えても、互いに遠慮して自身の意見や、考えを伝えることができない環境は、よい職場環境とは言えません。QCサークル活動においては、社内でのコミュニケーションやメンバー同士のディスカッションが必要不可欠です。
全社一丸となってQCサークル活動に取り組むことでチームワークや仲間意識が高まり,スタッフ同士の連結がより強固なものとなるのです。また、QCサークル活動は上記にも述べた通り、自己の成長や能力を発揮することができる活動です。QCサークル活動を通して、社員一人一人が仕事にやりがいを持つことができれば、活気のある職場になるだけでなく、個々の能力が高まることで企業の繁栄にも繋がります。
QCサークルの進め方
これまで、製造業におけるQCサークル活動の歴史やメリットをご紹介しました。
では、次に実際にQCサークル活動を実施するにあたっての進め方をご紹介します。
メンバー選定
初めに、メンバー選定を行う必要があります。
QCサークルは、同じ職場内の同じような業務をしている人たちで結成されます。そのうち、一人をリーダーとします。
リーダーは、リーダーシップが求められるので、職場の監督者などが適任です。
また、一般的にQCサークルは、1グループあたり6人ほどで構成されています。メンバーの人数が多すぎると、QCサークル活動の基本理念である全員参加の活動が難しくなる一方で、メンバーの数が少ないと1人あたりの役割分担の比重が重くなりすぎてしまうからです。
テーマ・目標選定
メンバーが決まれば次は、活動テーマの選定です。QCサークルの活動は、職場内における改善活動を行うグループです。テーマ選定の良し悪しによって、QCサークルメンバーの成長や、社内での貢献度など、QCサークル活動の是非が決まります。よりよいテーマ選定のためには、メンバー全員でよく話し合うことが必要です。
テーマ選定にあたっては、メンバーのモチベーションを保つために、QCサークルの成長度合いに応じたテーマを選ぶことも大切です。結成間もないQCサークルなのであれば、製造現場で働いているからこそわかる業務内での気づきや、現在職場内で困っていることなどをよく話し合い、テーマ選定をすると良いです。ベテランのQCサークルになるとメンバーだけでなく、管理者とも話し合い、会社の方針に沿ったテーマなど、難易度をあげて挑戦していくことで、活動の意義を感じることができます。
テーマが決まった後は、目標を設定します。目標を設定するには、数値を踏まえた現状の把握が必要です。データの整理・分析においての代表的な手法として『QC7つ道具』があります。解決するべき問題の要因を特定するため、『QC7つ道具』の中のパレート図や特定要因図などを用いて、現状の状態のデータを収集し、その結果を踏まえて、目標値と達成期限を設定します。次は、限られた期間で成果を出すために、ガントチャートなどを用いて活動計画を作成します。
ここでは、いつまでに何をするのかといった日程と役割分担を決めます。
改善立案
次は、いよいよ改善活動です。改善活動は、以下の3つの手順で行います。
手順①: 要因の洗い出し
手順②: 要因の解析
手順③: 真因の検証
問題を解決するためには、メンバー全員でしっかりと向き合わないと、的外れな対策をとってしまい、なかなか問題の本質にたどりつけません。そうならないためにも、手順を守って進めていく必要があります。それにあたって、手順①では現状の数値データを踏まえ、特性を生み出している要因の洗い出しを行います。
その際、一つの事象に対して「なぜ?」を5回繰り返し、根本原因を探っていく『なぜなぜ分析』が有効です。要因の洗い出しが出来たら、問題との関係性を整理します。
ここでは、特定要因図や連関図を使って整理すると良いでしょう。問題の真因が推定できたら、次は手順③の真因の検証です。
ここで行う検証は、実際に現場や現物を見るだけでなく、時間的な変化も考慮した真因の影響の確認です。
改善活動
真因が特定出来たら、QCサークルメンバーで話し合い、対策を検討します。メンバーでアイデアを出し合うだけでなく、必要であれば管理者や、技術者の意見を参考にします。
話し合いを元に具体的対策を考え、対策案を実験します。実験により効果が得られたら、対策内容を踏まえた仮の作業マニュアルを作成します。
作成マニュアルに従って対策を実施し、結果のデータを収集します。
結果データと目標値を比較し、問題解決への達成度を評価します。この時、達成度が不十分であればもう一度要因の解析に戻りましょう。思うような結果が得られたら、仮のマニュアルを正式なマニュアルとし、社内で守り続けましょう。
陥りやすい失敗
ここまで、QCサークル活動のメリットや進め方をご紹介しました。
製造業において品質管理に有効な手段として、日本のみならず、世界各国にまで広まったQCサークル活動ですが、『思うように成果が上がらなかった』『活動が停滞してしまっている』などといった声が挙がることがあります。そこでここからは、QCサークル活動を実施する上で、陥りやすい失敗とその注意点についてご紹介します。
QCサークル活動へのモチベーションが保てない
個人の役割が大きいQCサークル活動では、メンバーのやる気を醸成することが大切です。そのためには、テーマ選定が重要です。実りある活動にしたい一心で、初めから難易度の高いテーマに取り組むと、いつまでも解決の見通しがつかずメンバーのやる気はそがれてしまいます。
そこで、初めは取り組みやすいテーマから始めることをお勧めします。小さなことでも、成功体験を持つことで、達成感を味わうことができ、メンバーのやる気に繋がります。初めはQCサークル活動を
知ることに注力し、徐々に難易度の高いテーマに取り組みましょう。
メンバー各自の業務が忙しく、QCサークル活動が進まない
QCサークル活動は、全員が参加して、初めて高い効果を生み出します。しかし、忙しくてなかなかQCサークル活動に参加できないというケースも少なくありません。
そこで、前もって年間の会合日時の決定と、会合場所の確保を行うことをお勧めします。その際、メンバー全員が参加できる時間帯や、職場の繁忙期などを考慮したスケジュールを組むことが大切です。
また、必ずしも60分以上の会合時間が必要とは限りません。話し合いを有する会合であれば、60分程度の時間が必要ですが、連絡や確認だけであれば5分~10分で十分に行えます。このように、会合の目的によって会合時間を設定することで、メンバー全員がQCサークル活動に参加できるようにしましょう。
QCサークル活動がマンネリ化してしまう
QCサークル活動は、企業の永続的な繁栄やスタッフの能力向上の場として、継続的に活動を続ける必要があります。それゆえに、QCサークル活動では活動自体がマンネリ化してしまうことがあります。
QCサークル活動において、大きなテーマに取り組むことは大切ですが、目標期間が来たら、目標に届いていなくても一度活動を振り返り、次の活動を精査することが必要です。また、QCサークル活動の成果に対するねぎらいや、賞賛のための表彰制度の見直しなどもマンネリ防止に効果的です。
以上がQCサークル活動の陥りやすい失敗です。
QCサークル活動の実績につきましては、弊社ホームページ内『QCサークル実績』でも紹介しています。
QCサークル全国大会で奨励賞受賞に繋がった実績など、多くの受賞実績がありますので、ぜひ参考にして下さい!
まとめ
今回は、製造業における品質管理に有効なQCサークル活動についてご紹介しました。
QCサークル活動は、品質管理に寄与する非常に有効な活動です。
同時に、製造業のスタッフにとって能力向上の場であり、企業の繁栄にも大きく寄与します。
また、そのような推進活動を進めていくなかで、ノウハウや知見を持ったスタッフを派遣する、弊社のチーム派遣サービスも貴社の企業活動の一助となります。
ご不明な点がありましたら、弊社お問合せ窓口までお気軽にお問い合わせください。
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