派遣コラム
【製造業の人事・労務必見】2026年3月改定「技人国」派遣ビザ厳格化!受け入れ企業が知るべきリスクと対策

2026年1月の閣僚会議で決定された方針に基づき、出入国在留管理庁は派遣形態による外国人雇用の審査を抜本的に見直しました。
これを受け、2026年3月9日の申請分から、「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)ビザで外国人材を「派遣」で雇用する際の新ルールが適用されています。
これまで、「ビザの手続きは派遣会社(派遣元)に任せておけば安心」と考えていた派遣先企業(受け入れ企業)は多いのではないでしょうか。
しかし、今回の改定により、受け入れ企業にも重い法的責任と調査協力が義務付けられることになりました。
本コラムでは、製造業の人事・労務・採用担当者が知っておくべきルールの変更点と、製造現場に潜む致命的な法的リスク、そして直ちにとるべき対策をわかりやすく解説します。
ズバリ何が変わる?派遣先企業に直結する「5つの変更点」
今回の運用変更により、外国人材の「とりあえずのビザ取得」や「グレーな現場労働への派遣」は厳格に禁止されることになります。
受け入れ企業に直結する5つの重要な変更点は以下の通りです。
更新時の提出書類が大幅増加
これまで技人国ビザは主に派遣元の書類で審査されていましたが、今後は申請書類の一部として、派遣元と「派遣先」双方が署名した「誓約書」の提出が必須となりました。
派遣先企業は、技人国の活動範囲を理解して専門的な活動に従事させること(単純労働をさせないこと)や、入管の調査に協力することを書面で誓約することになります。



引用元:https://www.moj.go.jp/isa/content/001457164.pdf
申請時点で「派遣先」の事前確定が絶対条件に
これまでは「まずは派遣会社への所属でビザの許可を取り、入国してから派遣先を探す」という手法が事実上通用してしまうケースがありました。
しかし今後は、申請時点において派遣先が確定しており、具体的な業務内容が証明できなければ、在留諸申請(認定・変更・更新)の許可を受けることができなくなりました。
在留期間は「派遣契約期間」に連動
派遣形態で就労する場合、派遣先企業との派遣契約期間に応じた在留期間が決定されるようになります。
例えば、派遣先との契約が「6ヶ月」や「1年」である場合、本人の希望にかかわらず、その契約期間に基づいた短い在留期間しか付与されない可能性が高くなります。
入管による派遣先への「直接調査・実地調査」の実施
これが実務的に最も大きなインパクトを持つ変更です。
在留審査の際、入管庁は派遣会社だけでなく、派遣先企業に対しても、申請人の業務内容や活動状況について電話での「直接確認」や、抜き打ちでの「実地調査(現場立ち入り)」を行う場合があることが明確に示されました。
製造業に潜む「致命的なリスク」とよくある勘違い
そもそもなぜ、派遣先企業を巻き込むような厳しい措置が取られたのでしょうか。
そこには、製造業ならではの現場の実態が関係しています。
厳格化の背景にある「違法就労」の蔓延
技人国ビザは本来、「大学等で学んだ専門的・技術的な知識を必要とする業務(エンジニアや通訳など)」にのみ従事できる資格です。
しかし現実には、書類上は専門職として申請しながら、実際の派遣先の工場で専門的な知識を必要としない単純労働(現業)にフルタイムで従事させる違法就労が後を絶ちませんでした。
派遣会社と受け入れ企業の「黙認」構造
一部の派遣会社は、「1日の業務の中に少しでも通訳が含まれていれば、残りの時間は工場でのライン作業をさせても問題ない」という身勝手な拡大解釈をしていました。
また、工場での単なるライン作業の進行管理や備品管理を、無理やり「生産管理」と偽って申請する手口も横行していました。
一方、受け入れ企業側も、現場で外国人が現業を行っていることを把握しながら、「派遣元(プロ)がOKと言っているから」と黙認し、責任の所在が曖昧になっていたという経緯があります。
企業が負う法的リスク
今回の厳格化により、「うちは派遣してもらっているだけだから関係ない」「少しなら現場作業をさせても大丈夫と言われた」という言い訳は一切通用しません。
もし、「通訳」や「エンジニア」として受け入れた外国人に、工場でのライン作業等の単純労働をさせていた場合、違法な就労として、派遣元だけでなく派遣先企業も「不法就労助長罪」に問われる致命的なリスクがあります。
不法就労助長罪は厳罰化されており、現在は「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)」という非常に重い刑事罰が科される可能性があります。
人事・労務担当者が「今すぐ」やるべき3つの対策
このような重いリスクを回避し、自社を守るために、製造業の人事・労務担当者は直ちに以下の対策を講じる必要があります。
「丸投げ」からの脱却と業務内容の厳格な審査
派遣会社から提案される外国人材の在留資格(ビザの種類)を必ず確認してください。
「技人国」であった場合、自社で任せる予定の業務が「本当に大学レベルの専門知識を要する業務なのか」を、社内で厳しく審査する必要があります。
【確認例】
| 在留カードの確認 | 期限切れはないか、裏面に制限がないか。 |
| 業務の質的評価 | 実際に「学術的・専門的知識」を必要とする業務に何時間費やしているか 。 |
| 現場での「手伝い」の有無 | 現場の班長やリーダーが、善意でライン作業を手伝わせていないか。 |
現場責任者(工場長など)への教育徹底
製造現場では、「人手が足りないから少しラインを手伝ってほしい」という事態が日常的に発生しがちです。
しかし、これが命取りになります。
工場長など、現場で直接指示を出す担当者に対し、「この外国人スタッフには現業(ライン作業など)を手伝わせてはいけない」というルールを徹底させてください。
既存案件の総点検
現在、技人国スタッフを派遣で受け入れている場合は、直ちに実際の現場での業務内容を確認してください。
少しでも現業が含まれている場合は、業務内容の再設計や引き揚げを検討する必要があります。
また、現場の作業要員が必要な場合は、原則として派遣が禁止されている「特定技能」ビザの活用(直接雇用)や、人材紹介へのシフトなど、採用戦略そのものを切り替える必要があります。
まとめ
2026年3月以降、技人国ビザでの派遣就労は「安易な労働力確保の手段」としては完全に使えなくなりました。
制度を正しく理解し、適法な運用体制を構築しなければ、企業は刑事罰や事業停止といった大きなダメージを負いかねません。
適正な運用こそが、外国人人材の安定した就労と自社の社会的信用を守る唯一の道です。
不安がある場合は、専門家である行政書士等に相談し、現在の運用が適法かどうかのコンプライアンスチェックを受けることをお勧めします。
当社でも無料ご相談を承っております。
下記のURLからお問合せフォームにてご連絡を頂きますようお願い申し上げます。
https://info.fujiarte.co.jp/l/1000781/2022-10-12/hdy
【参考資料】
・在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもって派遣形態で就労する場合の取扱いについて(出入国在留管理庁 令和8年2月)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001457164.pdf
・外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策(外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議 令和8年1月)
https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/pdf/kettei_honbun.pdf
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