1. 派遣スタッフの業務内容を変更する際の注意点とは?

派遣コラム

2024.04.11

派遣スタッフの業務内容を変更する際の注意点とは?

 

製造業界では、生産内容や急な需要変化に対応するため、派遣スタッフは重要な役割を果たしています。

しかし、業務内容の変更や追加が必要になった際に、派遣スタッフの適性や契約取り扱いに関する課題が生じることがあります。

そこで、今回は自動車部品メーカーA社を例に、業務内容の変更に伴う注意点について考えてみたいと思います。

事例:自動車部品メーカーA社での派遣スタッフ活用の場合

A社では、生産変動が激しく予定が立てにくい状況のため、有期雇用の派遣スタッフを活用していました。

ある週、部材の調達遅延により組み立て部門の人数に余剰が生じたため、グループリーダーの話し合いで10名の派遣スタッフを、最終検査部門と出荷部門に割り当てることにしました。

しかし、この10名は組み立ての経験しかなく、業務変更についての事前連絡もなかったため、派遣スタッフから不平・不満の声が上がりました。

派遣スタッフの業務内容を変更する際によくある問題点

このケースの問題は、以下のように挙げられます。

1.派遣スタッフの適性とのミスマッチ
・業務内容の変更により、派遣スタッフの負担増加や適性とのミスマッチが生じる可能性がある。
・派遣会社への事前相談を通じて、派遣スタッフのスキルや適性を考慮した人選が必要。

2.派遣契約内容の変更
・業務内容や部署の変更に伴い、派遣契約内容の変更や差し替えが必要となる場合がある。
・派遣法に基づき、業務内容の変更時は改めて派遣契約を締結する必要がある。

3.派遣先から派遣スタッフへの直接的な業務内容変更の予告
・派遣先が派遣元を経由せずに直接的に派遣スタッフに業務内容の変更を予告することは法律で禁じられている。
・派遣スタッフの雇用主は派遣元であるため、派遣先から派遣スタッフへの直接的な変更予告は避けるべき。

4.派遣スタッフの不安や不満への対応
・不適切な対応により、派遣スタッフから退職や他の就業場所への移動を求める声が上がる可能性がある。
・派遣スタッフの安定雇用と生産性向上のため、派遣先・派遣元双方が法律に基づく適切な対応を行うことが重要。

スムーズに派遣スタッフの業務内容を変更するためのポイント

事例のように、製造業では生産変動により派遣スタッフの業務内容を調整しなければならないケースが発生することがあります。
具体的には、以下のような状況が考えられます。

・派遣スタッフの仕事がなくなる
・業務の習熟とともに業務が追加される
・業務内容に変更が生じる

このような場合、派遣先企業は事前に派遣会社への相談が必要になります。
派遣会社は、派遣先企業からの発注に基づき、以下の条件を考慮して最適な人選を行っています。

・受注業務に対する適正賃金等の待遇
・所定時間や残業時間、休日等の諸条件
・業務に対する派遣スタッフ個人のスキルから見た危険度

しかし、派遣先企業が事前の相談なく業務内容を変更してしまうと、これらの前提条件が崩れてしまいます。
例えば、部材・原料の充填等の体力を要する業務と、精密商品の最終検査でマイクロメーターを使う業務では、必要とするスキルが大きく異なります。

派遣法では、従事する業務内容を変更する場合は派遣契約の変更に該当するため、改めて派遣契約を締結することが定められています。
派遣元は、派遣先から業務内容の変更希望を受けた場合、面談などを通じて派遣スタッフに変更内容を伝え、就業の継続意思を確認する義務があります。

派遣スタッフの継続希望の有無を1か月前までに明確にしなければならないため、業務内容が変更となる場合は、余裕をもって2か月前までに派遣元に相談することが推奨されます。これにより、派遣スタッフの適性とのミスマッチを防ぎ、円滑な業務遂行を実現できます。

派遣先企業と派遣会社が密に連携し、派遣スタッフの適性を考慮した業務内容の調整を行うことが、生産性の向上と派遣スタッフの安定雇用に寄与するでしょう。

派遣元への通知が必要な内容と頻度

業務内容の変更がある際には、派遣元へ早めに連絡することが重要ですが、それ以外にも派遣元へ通知すべき内容があります。
派遣先管理台帳の17項目のうち、特に重要な6項目は以下の通りです。

<派遣先管理台帳の6項目>
①派遣労働者の氏名
②派遣就業した日
③就業状況(日ごとの始業・終業・休憩時間)
④業務内容
⑤派遣就業した事業所の名称及び所在地・組織単位
⑥業務に伴う責任の程度

派遣先管理台帳は、派遣先企業から派遣元企業へ通知する義務のある書類であり、労働局の調査では就業状況報告書と呼ばれることもあります。

派遣先企業は、派遣元企業に対して、1か月に1回以上、一定の期日を定めて派遣先管理台帳の上記6項目の内容を通知しなければなりません。この中には「業務内容」も含まれています。

日頃から継続的にこれらの項目を通知することで、業務内容の変更などが必要になった際にも、派遣先、派遣元、派遣スタッフの間でスムーズな対応が可能になります。

まとめ

派遣スタッフの業務変更の際には、労働者派遣法に従って派遣元との事前相談が必要になります。

特に、契約期間中の変更の場合は、派遣スタッフも含めた三者間で変更内容について合意する必要があります。

業務内容の変更時には、契約内容の変更も伴うケースが殆のため、派遣先は派遣元と相談した上で、労働者派遣法の要件を十分に満たしているか留意して進めることが重要です。

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