1. 厚生労働省が発表したカスタマーハラスメント対策企業マニュアルとは何か。企業はこのハラスメントに対応する義務があるのか。

労務管理Q&A

2022.04.26

厚生労働省が発表したカスタマーハラスメント対策企業マニュアルとは何か。企業はこのハラスメントに対応する義務があるのか。

ご質問内容

令和4(2022)年2月に厚生労働省が「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル以下【マニュアル】といいます」という文書を発表しました。
そもそもカスタマーハラスメントとは何ですか?ハラスメントの一種であるなら、企業に防止措置を講ずる義務があるのですか?

専門家からの回答

労働施策 総合推進法※1に基づき告示され パワハラ防止指針※2において、「 顧客等からの著しい迷惑行為であって、労働者の就業環境を害する もの (カスタマーハラスメント)」 から労働者を守る措置を併せて講ずるよう、事業主に求めています。
現在、カスタマーハラスメント 対策は事業主の努力義務※3であり 、厚生労働省が取り組みを促進するためのマニュアルを発表したのです。

※1 正式法律名「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(昭和41年法律第132号)
※2 正式指針名「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)
※3 努力義務は、取り組みの内容・水準を事業主に委ねているため、取り組みが不十分であっても法違反ではなく、行政から是正指導されることはありません。

カスタマーハラスメントの定義

このマニュアルは法令ではないので法律上のカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます )の定義はありません。
しかし、事業主がカスハラ対策に取り組む上である程度の基準や定義が必要になるため、厚生労働省はマニュアルにおいて次のような内容をカスハラとしています。

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの

カスタマーハラスメントの類型と対策例

マニュアルでは、カスハラの代表的な類型を示して、事業主として講ずる対策例を挙げています。

類型 行為内容 対策例
時間拘束型 長時間にわたり従業員を拘束する、居座る、長電話する。 一定時間経過後は対応できない旨を告げてお引き取り願う、電話を切る。居座る場合は警察への通報も検討する。
リピート型 理不尽な要求について何度も来店する、繰り返し電話してくる、面会を要求する。 相手・連絡先を特定した上で窓口を一本化し、対応を時系列に記録、これ以上の対応はできないと告げる。場合により弁護士へ相談、警察へ通報も検討する。
暴言型 怒鳴る、人格を否定する侮辱的発言を行う。 録音し、退去を求める。
暴力型 蹴る、殴る、物を投げつける、わざとぶつかってくる。 安全確保のため警備員と連携して物理的な距離をおき、ただちに警察に通報する。
脅迫型 「殺されたいか」等の発言、反社会的集団とのつながりを示唆し従業員を怖がらせる。 複数名で対応し、従業員の安全確保を優先する。「総会をぶっこわす」と言われても毅然と退去を求め、場合により警察に通報する。
権威型 お断りしても「特別扱い」を要求、土下座や謝罪の強要。 要求はのまない、不用意な発言をしない。
対応を上位者に交替する。
店舗外
拘束型
顧客の自宅や喫茶店など店舗外へ従業員を呼び出す。 返金等は事前に金額基準および交渉時間・内容を決め、店舗外での面談は公共性の高い場所とする。従業員を拘束して帰さない場合は、警察へ通報する。
SNS/インターネット誹謗中傷型 SNSやインターネットで名誉を毀損する情報、従業員の画像や個人情報を公開する。 サイトの運営者に削除を求める。削除されない場合等は法務局、「違法・有害情報相談センター」「誹謗中傷ホットライン」を利用する。
セクハラ型 身体への接触、まちぶせ、つきまとい、執拗なデートの誘い、個人的連絡先を知りたがる。

録音・録画で証拠を残し、行為者に警告する。行為をやめない場合は施設への出入りを禁止する。悪質な場合は弁護士や警察へ相談する。

従来のハラスメント窓口の活用

まずは、従業員に上記のようなカスハラに「どう対応するか」を教育し、被害にあった場合は従業員が相談できるよう、従来から設置されているセクハラ・パワハラの相談窓口を活用したり、法務セクションと連携する制度を整備するのがのぞましいでしょう。

厚生労働省ホームページにはリーフレットやポスターを無料でダウンロードできるコーナーがあります。ぜひご活用ください。

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