1. 派遣労働者から派遣先の公益通報相談窓口に通報があった場合、派遣元責任者にも情報を共有してよいか

労務管理Q&A

2022.07.21

派遣労働者から派遣先の公益通報相談窓口に通報があった場合、派遣元責任者にも情報を共有してよいか

ご質問内容

令和4(2022 )年6月に改正公益通報者保護法が施行されたので、当社でも通報相談窓口を設置しました。
ところで、受け入れている派遣労働者から当社の通報相談窓口に申出があった場合は、派遣元責任者にもその旨を伝えてよいでしょうか。

専門家からの回答

企業内で公益通報相談窓口を担当する役員や社員は、 誰から通報があったのかということを第三者に漏洩させてはなりません。
派遣労働者から通報があり派遣元責任者に情報を共有したい場合も、「調査を行う上で派遣元責任者の協力が不可欠」
「その旨を通報した派遣労働者に説明し同意を得る」というプロセスが必要です。

公益通報相談窓口の設置

公益通報とは、役員や労働者(受け入れている派遣労働者、下請の労働者も含みます。また1年以内の退職者も対象です) が、企業内で行われている不正を発見した場合に、企業内の通報相談窓口または行政機関もしくは報道機関に通報することです。
令和4(2022)年6月1日から、 従業員 301人以上の企業では ① 公益通報相談窓口の設置、 ②通報があった場合の調査、 ③不正があった場合に是正措置を講ずること、が義務となりました 。
300人以下の企業では①~③は努力義務となっていますが、通報相談窓口がない場合は行政や報道機関に通報することになるので、できる限り自社内に窓口を設置し自主解決できる体制を整備されることをおすすめします 。

公益通報相談窓口の設置

通報相談窓口の担当者

企業は、通報相談窓口で「通報を受け付ける者」や、「真相解明の調査等に従事する者 」 、「 是正措置を実施する者」を公益通報業務対応のための「 従事者 」として指定する必要があります。
従事者には「通報した人が特定される情報を漏洩させない」という守秘義務が課せられ、違反者には会社内の懲戒処分にとどまらず刑事罰が適用されます。
したがって、本人が「私は従事者である」「守秘義務が課せられている」ことを認識できるように指定しなければなりません。

守秘義務に違反した場合は30万円以下の罰金(刑事罰)

派遣元責任者も第三者

派遣労働者が、派遣先に設置された通報相談窓口に、派遣先事業所内の不正を通報することも考えられます。
この場合、 派遣元責任者は公益通報対応業務の「従事者」以外の第三者にあたるので、「派遣労働者に関することは何でも派遣元責任者と情報共有」という感覚で派遣元責任者にただちに通報の事実を知らせることはできません(上記の守秘義務に抵触する可能性があります)。
真相解明のためには派遣元責任者の協力が必要であって、その旨を通報した派遣労働者に説明しできる限り同意を得て情報を共有してください 。

通報したことに対する不利益取扱の禁止

☑ 派遣先は、派遣労働者が通報したことを理由に、労働者派遣契約を解除することはできません。このような契約解除は無効とされます。
☑ 派遣労働者が通報したことを理由に、派遣元事業所に対して派遣労働者の交替を要求することはできません。

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