1. 派遣労働者の待遇は、派遣先均等・均衡方式と派遣元労使協定方式のどちらで決定することが多いのでしょうか。

労務管理Q&A

2025.02.17

派遣労働者の待遇は、派遣先均等・均衡方式と派遣元労使協定方式のどちらで決定することが多いのでしょうか。

ご質問内容

新年度に向けて、派遣会社と派遣先とで、派遣料金についての相談が行われています。派遣料金を左右するのは、派遣労働者に支払う賃金や、福利厚生に充てる費用です。派遣労働者の待遇は、派遣先均等・均衡方式と派遣元労使協定方式のいずれで決定している会社が多いのでしょうか。

専門家からの回答

許可を得ている全ての派遣会社に対する調査は実施されていませんが、厚生労働省が令和6年に提出された事業報告書からサンプルを抽出して実施した調査では、派遣元労使協定方式90.5%、派遣先均等・均衡方式7.7%となっており、労使協定方式が圧倒的に多くなっています。

待遇決定方式

派遣労働者の待遇は、雇用している派遣元事業主(派遣会社)が決定します。労働者派遣法では、派遣元事業所ごとに「派遣先均等・均衡方式」「派遣元労使協定方式」のいずれかにより派遣労働者の待遇を決定するよう求めています。厚生労働省の調査では、労使協定方式を採用する派遣元事業所が多くなっています。

派遣元労使協定方式 派遣先均等・均衡方式 併 用
令和6年 90.5% 7.7% 1.8%
令和5年 88.8% 7.9% 3.3%

基本給設計時に指標とする能力・経験指数の選択

労使協定方式で基本時給を設計する際に比較の対象とする、一般賃金の能力・経験指数(統計上の一般労働者が勤続年数に応じて能力を向上させた場合の賃金の変化をあらわすものに相当)について、何年目を比較対象に選定したかという調査の結果です。0年目(初任給)、3年目、10年目が多くなっていますが、これらは厚生労働省のモデル労使協定にならったものと考えられます。

0年 1年 2年 3年 5年 10年 20年
令和6年 96.3% 35.2% 28.2% 68.8% 44.9% 70.1% 18.3%
令和5年 97.0% 33.4% 28.7% 78.0% 49.7% 79.1% 19.1%

通勤手当の支給方法

通勤手当は実費支給が圧倒的に多くなっています。
特に都心部から離れた地方では、実際に要する交通費(ガソリン代も含む)を支給しなければ、求人への応募も得られないと考えられます。

  通勤手当 (実費支給) 通勤手当 (定額支給) 基本時給に72円上乗せ その他
令和6年 94.4% 1.3% 3.0% 1.3%
令和5年 92.3% 6.7% 0.3% 0.7%

退職手当の支給方法

労使協定方式で待遇を決定する場合は、派遣元に雇用される正社員に退職金制度がなくても、派遣労働者には退職手当に相当する賃金を支払う義務があります。
退職手当に相当する賃金の支払い方は、「退職一時金(退職時に一時金として支払う)」「時給に決められた率で計算した額を上乗せ」「中小企業退職金共済制度を利用」のいずれかより選択することになっています。
退職時に一時金として支払う退職金制度が減り、時給に上乗せして日々の賃金とともに「前払い」する制度を選択する派遣元事業所が増えています。

退職一時金式 時給に上乗せ 中退共加入 その他
令和6年 24.3% 63.5% 6.0% 6.3%
令和5年 30.2% 56.0% 8.4% 3.4%

0年目(初任給)の賃金水準

労使協定方式により派遣労働者の0年目(初任給)の賃金を設定したときの、実際の職種別の賃金水準は以下のとおりです。この統計では、例えば「1,000円~1,200円」と協定していた場合は、下限額1,000円により作成しています。
労使協定の初任給下限値がいずれも一般賃金水準(統計上の地域別職種別賃金水準)より高くなっており(一般賃金水準との差額の平均値欄)、人手不足を背景に派遣労働者の雇入れ直後の待遇改善がすすんでいることが推測されます。

職業分類 労使協定0年目賃金の記載状況
平均値 最高値 中央値 一般賃金との差額の平均値
25 一般事務 1,150円 1,454円 1,088円 +46円
54 製品製造・加工処理 1,095円 1,619円 1,067円 +21円
10 情報処理・通信技術者 1,417円 1,810円 1,389円 +27円

本記事の根拠となった調査は、労働政策審議会職業安定分科会需給調整事業部会に審議の参考として
厚生労働省が提供したものです。調査内容につきご質問がある場合は、営業担当にお問い合わせ下さい。

フジアルテがわかる3点セット(会社概要、支援実績、サービスの特徴)
>>ダウンロードする

無料

製造業の人事・労務の最新情報をメルマガで
いち早くお届けします!

メルマガ登録をすると、過去の「労務管理Q&A」も会員専用ページにて全てご覧いただけます。
  • 人材派遣の業界ニュース、関連法案の見解
  • 労働問題のお悩みに専門家が詳しく回答
  • コンプライアンス・セミナーの開催情報