1. 令和5(2023)年4月から中小企業も月60時間超の法定時間外労働に。割増率5割の割増賃金支払が義務となるが、派遣料金に影響はあるのか

労務管理Q&A

2022.12.28

令和5(2023)年4月から中小企業も月60時間超の法定時間外労働に。割増率5割の割増賃金支払が義務となるが、派遣料金に影響はあるのか

ご質問内容

令和5(2023)年4月1日から、これまで猶予されてきた中小企業についても、月60時間を超える法定時間外労働に対する割増賃金の割増率が5割となります。
派遣元が中小企業である場合、令和5(2023)年4月から派遣料金も改定を求められるのでしょうか。

専門家からの回答

60時間超の割増率の件はもちろん、労使協定方式によって派遣労働者の賃金額を決定している派遣元については、毎年4月1日に職業安定局長が示す賃金水準以上に改定しなければならないので、企業規模の大小にかかわらず派遣料金見直しの機会となるでしょう。

法定時間外労働60時間超と賃金の割増率

法定時間外労働60時間超と賃金の割増率

法定労働時間を超えた労働に対し、使用者は一定の割増率を乗じた賃金(割増賃金)を支払わなければなりません。法定時間外労働が月60時間を超えると、大企業については平成22(2010)年4月より割増率50%とされていましたが、中小企業については時間数にかかわらず25%で足りるとされていました。
しかし、令和5(2023)年4月からは中小企業にも大企業と同様に、月60時間超については、割増率が50%となります。

ここでいう中小企業と大企業の区別は「中小企業基本法」に定めるところによります。
具体的には業種別に次の①資本金額または②従業員数のいずれかを満たすと中小企業です。

小売業    :①5,000万円以下②50人以下
サービス業  :①5,000万円以下②100人以下
卸売業    :①1億円以下②100人以下
それ以外の業種:①3億円以下②300人以下

派遣労働者の割増率は、派遣元事業主の企業規模による

派遣労働者は派遣先で労働していますが、派遣元と派遣先のいずれの企業規模で割増率を判断するのでしょうか。これは、賃金支払義務がある派遣元事業主の企業規模で判断します
したがって、派遣元事業主(事業所単位ではなく法人単位)が大企業の場合は、既に月60時間超の法定時間外労働に対し、派遣労働者に割増率50%以上の割増賃金が支払われていることになります。逆に、派遣元が中小企業の場合は、まさに令和5(2023)年4月の労働に対して支払う賃金から初めて50%の割増率を適用することとなるので、月60時間超の法定時間外労働に対する派遣料金の見直しは、あり得ます。

派遣料金、派遣労働者の賃金およびマージン率

下記は厚生労働省が令和4(2022)年3月31日に発表した「令和2年度労働者派遣事業報告書の集計結果(速報値)」ですが、派遣料金に占めるマージン率は平均して約35.6%(小数点以下第2位四捨五入)であることがわかります。

派遣料金、派遣労働者の賃金およびマージン率

派遣料金の設定は各派遣元事業主の裁量のため一律に決められてはいませんが、派遣元から派遣料金の価格改定の提案がある場合は、このようなマージン率をひとつの目安として参照されるとよいでしょう。

労使協定方式による待遇決定では毎年4月にベースアップ

これまで述べてきた月60時間超の法定時間外労働に対する割増賃金とは別に、労使協定方式で派遣労働者の待遇を決定する派遣元事業所においては、派遣労働者の賃金を職業安定局長が前年に通達した水準以上にするため、毎年4月1日にベースアップを行います。
職業安定局長の通達は、おおむね前年の8~10月頃に発出されますので、既に新年度のベースアップ予定額の計算はされており、これに対する派遣料金額の改定を提案する派遣元事業所も多いことでしょう。

法定時間外労働60時間超と賃金の割増率

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