1. 厚生労働省が地方労働行政運営方針を発表しました。今年はどのような調査や監督が行われる予定でしょうか。

労務管理Q&A

2023.05.26

厚生労働省が地方労働行政運営方針を発表しました。今年はどのような調査や監督が行われる予定でしょうか。

ご質問内容

厚生労働省が地方労働行政運営方針を発表しました。
各都道府県労働局では、これをうけて令和5年度の訪問調査する事業場や監督すべき業種などを選定するとのことですが、今年はどのようなことが重点になっているのでしょうか。

専門家からの回答

トップに掲げられているのは「構造的賃上げ」です。特に非正規労働者を多く雇用する事業場には、「同一労働同一賃金」の観点から適切な待遇が確保されているかの訪問調査が行われます。
また、需給調整事業分野では、昨年改正された職業安定法に基づく適切な労働条件の明示(条件変更を含む)が重点となりそうです。

地方労働行政運営方針とは

厚生労働省は東京に所在しますが、47都道府県にその出先機関である都道府県労働局が設置されています。さらに、都道府県労働局の出先として労働基準監督署や公共職業安定所が設置されています。
これらの全ての機関で一体的な施策が推進されるように毎年度初めに行政事務方針として通達されるのが「地方労働行政運営方針」です。
したがって、この通達を見れば、その年度の重点指導事項をいち早く把握することができます

地方労働行政運営方針

今年の目玉は「構造的賃上げ」

昨年まで「雇用維持」が全面に押し出されていた行政方針ですが、今年度は岸田首相も明言した「構造的賃上げ」が大きく打ち出されています。
現在の地域別最低賃金の全国加重平均は961円ですが、毎年25円~30円ずつ引き上げられるのであれば、来年は平均1,000円に到達すると予想されます。

地域別最低賃金予想

非正規労働者の賃上げに欠かせない同一労働同一賃金

近年、若年層の不足から新卒正社員の賃金水準が上昇していますが、厚生労働省は短時間・有期雇用労働者の待遇改善を促進すべく、令和5年3月15日から5月31日までを「非正規労働者の賃金引き上げに向けた同一労働同一賃金取組強化期間」としており、労働基準監督署や労働局内の様々な部署で接触した事業所の「非正規労働者の待遇情報」を収集しています。
特に、製造業では期間工など短時間・有期雇用労働者を多数雇用している事業所は訪問調査の対象になりやすいと考えられます。
また、「派遣先均等・均衡方式」で派遣労働者を受け入れている場合は、「比較対象労働者を適切に選定しているか」が調査の対象となりますで、派遣先は要注意です。
故意に賃金の水準が低い労働者を選定しているような場合は、選定のやり直しを命じられる可能性があります。
「派遣元労使協定法式」で受け入れている場合は、「食堂・更衣室・休憩室」の便宜供与や、派遣労働者に必要な教育訓練等を行っているか、についてがヒアリングポイントです。
以上の「同一労働同一賃金」に関する考え方は、前月発刊の労務講座をご参照下さい。

改正職業安定法に基づく労働条件の適正な明示

昨年の10月に改正職業安定法が施行され、「適切な労働条件の明示」について重点的に点検が行われる予定です。
特に、求人~採用面接~雇用契約の過程で、労働条件が変更になった場合は、変更内容を明示しているかどうかの確認があります。
自ら求人し雇用する場合も、紹介予定派遣によって派遣労働者を直接雇用する場合も該当しますので、労働条件明示については、いま一度ご確認下さい。

労働条件の明示

令和6年4月には労働条件の明示事項が追加予定

労働条件の明示や採用後の変更をめぐるトラブルが増加したことから、このほど労働基準法施行規則が改正され、令和6年4月1日施行予定です。
改正後は、労働条件通知書に「転勤の範囲」「無期転換の時期の明示」など、これまでにない事項の明示が義務化されます。
詳細は、また別の号にて情報提供いたします。

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