労務管理Q&A
カスタマー・ハラスメント防止が事業主の義務になるとききました。派遣労働者については派遣元または派遣先のいずれに適用されますか?
ご質問内容
ニュースで「まもなくカスタマー・ハラスメント防止が事業主の義務になる」と聞きました。いつから義務になるのでしょうか。わが社は派遣労働者を受け入れていますが、派遣先として派遣労働者についてもカスハラ被害にあわないように防止措置を講ずる義務がありますか。
専門家からの回答
事業主に対するカスタマー・ハラスメントの防止措置義務等を盛り込んだ「労働施策総合推進法等を改正する法律案」が、3月11日に閣議決定されました。第217回通常国会を経て成立すると、令和8(2026)年4月にも施行されそうです。セクハラやパワハラ同様に、カスハラも派遣先を派遣労働者の事業主とみなし防止義務が課されます。
事業主に防止義務が課されているハラスメント
現在、事業主に防止のための措置を講ずることが義務付けられているのは、以下の4つのハラスメントですが、第217回通常国会において「労働施策総合推進法等を改正する法律」が成立した場合は、さらに2つのハラスメントが追加されます。
カスタマー・ハラスメント
カスタマー・ハラスメント(以下「カスハラ」)は、「顧客等からのクレームや言動のうち、その要求の内容や要求を実現するための手段が、社会通念上相当ではない(いわゆる非常識な)ものであって、労働者の就業環境を害する(苦痛を感じる環境になる)もの」です。一般に、飲食店や小売店における接客現場のイメージが強いですが、顧客等には法人としての取引先も含まれますので接客以外の職域にも関係があります。
雇用する労働者がカスハラの被害にあわないように、これらを防止する措置を講ずることは、現在は事業主の努力義務となっています(令和2年厚生労働省法告示第5号)。
法改正が行われた場合、現在の努力義務内容が義務化されることが見こまれます。
予想される「事業主が講ずべき措置」
- 会社はカスハラから社員を守ることを宣言し、会社の方針を社内に周知。
- カスハラを通報するための窓口や、カスハラ被害を相談できる窓口の設置。
- 被害者への配慮(人事異動、1人で対応させない、メンタル不調の場合は産業医や保健師との面談を設定するなど)。
- カスハラ対応マニュアルの作成や研修の実施。
就職活動ハラスメント
就職活動(以下「就活」)ハラスメントは「就活中やインターンシップの学生等に対するセクハラやパワハラ」のことをいい、立場の弱い求職者の尊厳や人格を不当に傷つける行為です。
求職者に対するハラスメントを防止する措置を講ずることは、現在は事業主の努力義務となっています(令和2年厚生労働省法告示第5号)。
法改正が行われた場合、現在の努力義務内容が義務化されることが見こまれます。
予想される「事業主が講ずべき措置」
- 就活ハラスメントは許されない旨のルールを策定し、人事担当者のみならず社内全体に徹底。
- リクルーター、採用に携わる役員や社員を対象とした研修の実施。
- 求職者を対象とした通報・相談窓口を設置。
- 採用担当者が求職者の個人情報を目的外に使用したり、個人的に連絡をとることがないような仕組みづくり。
派遣労働者への対応
派遣労働者は派遣先の指揮命令下で就業しているため、労働基準法ほかいくつかの法律の適用において、派遣先を便宜上「派遣労働者の使用者」とみなす運用がなされます。
セクハラ、マタハラ、育介ハラスメント、パワハラについては、派遣元も派遣先も双方を「派遣労働者を使用する事業主」とみなして、防止義務が課されています。
カスハラおよび就活ハラスメントにおいても、派遣元と派遣先の双方を「派遣労働者を使用する事業主」とみなして、防止義務が課される予定です。
弊社は、派遣先の皆様と連携し、派遣労働者だけではなく派遣先の労働者にとっても良好な職場環境の創出に努めてまいります。
カスハラや就活ハラスメントについてご質問がある場合は、営業担当にお問い合わせ下さい。
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