労務管理Q&A
労働者派遣法における被保険者証等の確認と罰則について
ご質問内容
労働者派遣法における健康保険の確認について質問です。
派遣会社は、派遣先に対して、健康保険等に加入しているかどうかを通知し、その際に健康保険の被保険者証等を提示しなければならないと認識していますが、派遣先の立場として、派遣会社が提示しない場合、派遣会社に提示を求める義務があるのでしょうか?
また提示を受けていない場合、何かしらのペナルティがあるのでしょうか?
専門家からの回答
派遣会社は、派遣労働者の就業の状況などを踏まえ、労働社会保険の適用手続を適切に進め、労働社会保険に加入する必要がある派遣労働者については、加入させてから労働者派遣を行うことが必要です(派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針)。
このため、派遣労働者の労働社会保険の適正な加入を担保するため、派遣会社は労働社会保険の加入状況やその変更について派遣先に通知しなければなりません(労働者派遣法第35 条)。
具体的には、派遣労働者に係る健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の被保険者資格取得届の提出の有無(「無」の場合は書類が提出されていない具体的な理由を付けて)通知しなければなりません(同法施行規則第27 条の2第2項)。
その具体的な理由としては、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の適用基準を満たしていない場合には単に「適用基準を満たしていないため」、「被保険者に該当しないため」などと記載するのでは足りず、「1週間の所定労働時間が15時間であるため」など適用基準を満たしていないことが具体的にわかるものであることが必要になります。
また、被保険者資格の取得届の手続中である場合には単に「手続中であるため」などと記載するのでは足りず、「現在、必要書類の準備中であり、今月の○日には届出予定」など手続の具体的な状況を記載することが必要であるとされています。
この通知は、派遣先が派遣労働者について派遣会社が労働社会保険に加入していることについて明確な認識を持った上で、労働者派遣の受入れを行う効果を期待して定められていることからすれば、派遣先として、派遣会社が健康保険の被保険者証等を提示しない場合に何もしなくて良いということにはなりません。
派遣先は派遣先管理台帳を作成し、派遣労働者ごとに所定の事項を記載し保存しなければなりません(同法第42 条)が、その記載事項に「通知を受けた派遣労働者に係る健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の被保険者資格取得届の提出の有無(「無」の場合は具体的な理由を付すこと)(同法施行規則第36 条第12 号)」がありますので、派遣会社が健康保険の被保険者証等を提示しない場合に派遣先が派遣会社に提示を求めなければ、派遣先管理台帳の適切な記載を行うことができません。
同法第42 条の規定に違反した者に対しては、30 万円以下の罰金が課せられます(同法第61 条)。
加えて、「派遣先が講ずべき指針」には、
「派遣先は、労働社会保険に加入する必要がある派遣労働者については、 労働社会保険に加入している派遣労働者を受け入れるべきであり、 派遣会社から派遣労働者が労働社会保険に加入していない理由の通知を受けた場合に理由が適正でないと考えられるときは、派遣会社に対し派遣労働者を労働社会保険に加入させてから派遣するよう求めること」
とする旨定めていますので、派遣先には派遣会社に健康保険の被保険者証等の提示を求めること以上に、労働社会保険に加入させてから派遣するよう求める義務があると考えられます。
派遣先指針自体には罰則の規定はありませんが、違反した者は行政指導の対象となると考えられます。
監修:木村 大樹 氏(国際産業労働調査研究センター代表)
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