1. 従業員同士のトラブル等を原因とした自宅待機における休業手当の支給率について

労務管理Q&A

2021.09.30

従業員同士のトラブル等を原因とした自宅待機における休業手当の支給率について

ご質問内容

労働基準法第26条における休業手当についての質問です。

当社は製造業を行っており、製造作業については、基本的に有期間社員に行ってもらっています。

先日、従業員同士の喧嘩がありました。職場の秩序維持の点を考慮し、喧嘩した従業員2名とも一旦自宅待機を命じました。処分は別として、待機中の賃金ついては支払いをしなければならないと考えています。

待機中の賃金額は、労働基準法第26条に基づき平均賃金の60%で支給すべきでしょうか?
または民法536条第2項に基づき100%の賃金を支給すべきでしょうか?

専門家からの回答

使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合には、使用者はその休業期間中、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません(労働基準法第26条)。

休業手当は、使用者の責任で労働者が就業できなかった場合に、その休業期間中、使用者が労働者に対して平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことにより、労働者の生活を保護しようとするものです。

一方、民法第536条第2項は、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」と規定しています。

両者の違いについて、最高裁判所は、「民法第536条第2項の『債務者の責に帰すべき事由』よりも労働基準法第26条の『使用者の責に帰すべき事由』の方が範囲は広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む(ノースウエスト航空事件 第二小法廷昭和62年7月17日)」との判断を示しています。

ご質問の件については、本件自宅待機の原因が従業員同士の喧嘩であったことからすれば、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないのではないかという疑問もあり得ると思われますが、これまでの裁判例を見ると、起訴休職による休業も、休業手当の支給対象となる場合があります。

例えば、人身事故を起こしたタクシー運転手に対して司法機関の処分が出るまでの間の特別休職(相互交通事件 函館地裁昭63年2月29日)や、懲戒委員会の審査の間休職処分を受けた場合(日通事件 大阪地裁昭和47年10月13日)に休業手当の支払いを命じたものがあります。

ご質問の中に、「職場の秩序維持の点を考慮し」とあることからすれば経営、管理上の障害が原因であると考えられますので、少なくとも労働基準法第26条に基づき平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があると考えられます。

一方、ノースウエスト航空事件最高裁判決は、「使用者側に起因する経営、管理上の障害」については、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」に該当するが、民法第536条第2項の「債務者の責に帰すべき事由」には該当しないとする趣旨であると解されます。

本件自宅待機は「職場の秩序維持の点を考慮した」経営、管理上の障害が原因であると考えられますので、民法536条第2項に基づき100%の賃金を支払うことまでは必要ないと考えられます。

監修:木村 大樹 氏(国際産業労働調査研究センター代表)

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