1. 都道府県労働局が派遣先を訪問し調査をする際に必ず点検する書類は何か

労務管理Q&A

2022.09.30

都道府県労働局が派遣先を訪問し調査をする際に必ず点検する書類は何か

ご質問内容

わが社は1年前から初めて派遣労働者を受け入れはじめました。来月、労働局の需給調整 指導官がわが社を訪問して、派遣労働者の受け入れについて調査を行うと予告がありました。
労働局の訪問調査で必ず点検される書類があれば知りたいのですが。

専門家からの回答

需給調整指導官は、労働者派遣法に基づき、派遣元や派遣先に書類の提出を求めたり、施設内に立ち入って法の施行状況について調査をする権限を付与されています。
今月は、派遣先が労働者派遣法に基づき保管する書類や記録について見ていきたいと思います。

派遣先が保管する書類

法律に基づき、派遣先が保管しているあるいは備え付けているべき書類や記録の一覧は次のとおりです。必ず作成し保管すべきもの、あてはまる場合に作成し保管すべきもの、また法律上作成義務はないものの多くの事業所で作成しているものがあります。

派遣先が保管する書類一覧

それぞれの書類の意義と留意点

労働者派遣法に基づくもの

① 労働者派遣基本契約書

派遣元と派遣先との法人単位の包括的な商取引に関する契約です。
労働者派遣法では作成義務はありませんが、多くの事業所で作成され、これに基づき個別の労働者派遣契約書を必要な都度作成することが多いです。

② 派遣先事業所単位の抵触日の通知

派遣先から派遣元へ通知し、その通知した内容の写が派遣先に保管されていることになります。また、過半数労働組合等の意見聴取により抵触日を変更した場合も通知が必要です。
抵触日は、必ず④の労働者派遣個別契約書締結日以前に通知しなければなりません。
なお、労働者派遣期間の制限がない業務に係る契約、60歳以上または無期雇用の派遣労働者のみを受け入れる場合は、この通知は不要です。

③ 比較対象労働者の待遇に関する情報の提供

派遣先均等・均衡式により派遣労働者の待遇を決定している派遣元と契約する場合は、比較対象労働者の待遇に関する情報を提供する必要があります。なお、派遣元労使協定方式により派遣労働者の待遇を決定している派遣元と契約する場合であっても、「社員食堂・更衣室・休憩室・その他福利厚生」「教育訓練内容」に関する情報は必ず提供が必要です。
この情報は、必ず④の労働者派遣個別契約書締結日以前に提供しなければなりません。派遣先は、提供した内容の写を保管していることになります。

④ 労働者派遣個別契約書

労働者派遣法第26条に基づき必ず作成しなければならない書類です。従来は書面による作成が義務となっていましたが、令和3年から電子化も可能になりました。
ただし、後日の改ざんや変更を防止するための措置を派遣元・派遣先双方でよく話し合って決めておく必要があります。

⑤ 派遣労働者に関する通知書

派遣元から派遣先へ、派遣労働者の氏名や性別、年齢に関する事項、その他公的保険適用状況など法令に定める個人情報が提供されてきます。派遣先は、派遣労働者が適正に雇用保険および社会保険の資格を取得しているかどうかを確認する義務があります。
確認は、派遣元から提供される資格取得通知書写や被保険者証写によって行いますが、非常にデリケートな情報なので、確認後に破棄や返却などのルールを決めておくことが望ましいです。
なお、派遣先は、確認した旨を⑥に記録します。

⑥ 派遣先管理台帳

派遣先は、受け入れた派遣労働者ごとに派遣先管理台帳を作成しなければなりません。派遣元が派遣先に、サービスとして派遣先管理台帳の様式を提供することもあるようです。もちろんその様式を活用することに問題はありませんが、派遣先は、その台帳に日々の派遣就業の記録や派遣労働者から受け付けた相談の内容、派遣労働者に実施した教育訓練の内容などを記載しアップデートしていく必要があります。
派遣先管理台帳に記載しきれない勤怠の記録や相談の履歴などは、別途記録して管理することも可能です。
派遣先管理台帳は当該労働者派遣終了後3年間保存義務があります。

労働基準法に基づくもの

⑦ 派遣労働者の派遣就業日ごとの始業・終業の時刻

派遣先は、労働基準法第32条(法定労働時間は1日8時間かつ1週間40時間と定めた条)の適用にあたり、受け入れている派遣労働者の使用者とみなされます。したがって、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき、直接雇用する労働者と同水準で始業・終業の時刻を適正に把握し記録する義務があります。
この記録内容は派遣先管理台帳に転記しますが、転記が難しい場合は、派遣先管理台帳に「別途保管」と記載して保存することになります。

労働安全衛生法に基づくもの

⑧ 労働安全衛生法に基づく教育の記録

派遣労働者に特別教育を実施した場合は、直接雇用する労働者と同様に記録を作成し3年間保存する義務があります。特別教育ではない教育(新入構者教育など)は法律上記録する義務はありませんが、派遣労働者が被災した場合に派遣先の安全衛生教育が適正であったかどうかを労働基準監督署が調査することがあるので、記録を作成することが望ましいでしょう。

⑨ 特殊健康診断の結果

派遣労働者の一般健康診断やストレスチェックテストは、派遣元に実施義務があります。ただし、特定の危険有害業務に従事する派遣労働者の特殊健康診断は、派遣先に実施義務があります。
検診実施後に検診実施機関から通知された結果は速やかに派遣元にも通知するとともに、派遣先で5年間保存しなければなりません(特別管理物質にかかる特殊健康診断と電離放射線健康診断・除染等電離放射線健康診断は30年間など場合によっては長期の保存が必要となります)。

労働局の訪問指導や備え付けの書類でお困りの場合は、営業担当にご相談下さい。

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