1. 年間安全衛生計画書は作成義務がありますか? 派遣労働者に関する事項も記載すべきでしょうか?

労務管理Q&A

2024.01.26

年間安全衛生計画書は作成義務がありますか? 派遣労働者に関する事項も記載すべきでしょうか?

ご質問内容

毎年3~4月頃に、所轄労働基準監督署から「年間安全衛生計画書を提出するように」という通知が届きます。そもそも計画書を提出することは義務なのでしょうか。
わが社では過去に派遣労働者が被災した事例があるのですが、派遣労働者の事故防止についても記載すべきでしょうか。

専門家からの回答

厚生労働省は、労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の導入を推奨しています。
このシステムは計画策定・実行・評価・改善を中心としており、年間安全衛生計画書はこのシステムの計画にあたります。

労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)とは

職場における事故や災害を防止し、労働者の安全と健康の増進に努めるのは、事業者の責務です(労働安全衛生法第3条他)。
しかし、実際に何を実行すれば安全や健康が増進できるのかは、企業の規模や、各企業が持つ各々の事情などもあり、単純には決められないものです。

そこで、厚生労働省は、各事業者が自主的に自らの事業におけるリスクを分析し、事故を防止するために安全衛生に関する計画(Plan)を策定し、労働者とともにこれらを実行し(Do)、その内容を分析・評価(Check)、次年度への改善を提案する(Act)というPDCAサイクルで職場の安全衛生水準を高めていく取組を推奨しています。これが、労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)です。

このシステムに取り組むことは義務ではありませんが、推奨されています

年間安全衛生計画書は、このシステムの計画(P)にあたります。

各労働基準監督署は、安全管理者を選任している事業場ほか労働者50人超を雇用する事業場や過去に4日以上の休業を伴う労働災害が発生した事業場などを対象に、このシステムに取り組むことを推奨し、年間安全衛生計画書を作成して提出するよう通知しています。

計画書の提出は義務ではありませんが、過去5年間に休業4日以上を伴う災害が発生しており計画書を提出しない事業場については、臨検(労働基準監督官が予告なく立ち入り調査すること)の対象や、呼び出しによる調査の対象となることがあります。

派遣労働者の事故と安全衛生計画

派遣労働者を雇用しているのは派遣元事業主ですが、派遣労働者が実際に労働しているのは派遣先における就業場所であり、指揮命令を行っているのは派遣先です。

このため、労働安全衛生法の一部の条文については、派遣先を派遣労働者の事業主とみなして、法律上の義務およびこれに伴う罰則を課しています。

労働安全衛生法において派遣先を派遣労働者の事業主とみなす事項の例

安全管理者(第11条) 受け入れた派遣労働者の人数を、派遣先で使用する労働者の人数に加算する。
衛生管理者(第12条) 受け入れた派遣労働者の人数を、派遣先で使用する労働者の人数に加算する。
危険又は健康障害を防止するための措置
(第20条~第36条)
派遣労働者が就業する作業環境、作業内容ごとに、
法令が定める災害防止措置を、講じなければならない。
安全衛生教育(第59条) 作業内容変更時教育は派遣元と共同して、危険有害業務就業時教育は派遣先の責任で実施する。
作業の管理、作業時間の制限
(第65条の3,第65条の4)
派遣労働者の健康に配慮し作業を適切に管理しなければならない。
また、厚生労働省令が定める健康に有害な業務の作業時間を守らなければならない。
安全衛生改善計画書等
(第78条~第80条)
重大な労災を発生させた事業者は、厚生労働大臣の命ずるところにより特別安全衛生改善計画書を作成し提出しなければならない。派遣労働者が被災した場合は、その事故の内容も踏まえて作成しなければならない。

「派遣元と派遣先で安全教育について連携できていなかった」「派遣労働者は経験が浅いのに、それをフォローするOJTが足りなかった」等、派遣労働者であることが要因のひとつとして事故が発生していた場合は、労働基準監督署は、年間安全衛生計画書にこれらの再発防止措置が盛り込まれているか、点検していると考えられます。

第14次労働災害防止計画

厚生労働省は、労働災害を減少させるため国が取り組む計画として「第14次労働災害防止計画」を策定し、
これに基づいて労働基準監督官が全国で安全衛生に関する啓発に取り組んでいます。

全体として「女性の中高年齢者」の「転倒」事故が多いほか、製造業では「はさまれ・巻き込まれ」事故が目立っています。

2024(令和6)年度安全衛生計画書を作成する際は、第14次労働災害防止計画書(厚生労働省のホームページに掲載)が提案する安全推進策を参考にしながら、
確実に職場の安全衛生水準を向上させる内容を定めたいものです。

監修:北桜労働法務事務所 社会保険労務士 田原咲世

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