1. 職業安定局長通達で派遣労働者の来年度の賃金水準が示されました 派遣労働者の賃金水準は今後も上昇傾向なのでしょうか

労務管理Q&A

職業安定局長通達で派遣労働者の来年度の賃金水準が示されました 派遣労働者の賃金水準は今後も上昇傾向なのでしょうか

ご質問内容

8月下旬に職業安定局長が、来年度の派遣労働者の賃金水準を通達したとききました。なぜ、派遣労働者の賃金を通達で決めるのでしょうか。毎年、派遣労働者の賃金が上昇しているようなので、派遣料金も上昇しています。今後も派遣労働者の賃金水準は上昇傾向が続く見込みなのでしょうか。

専門家からの回答

派遣労働者の待遇決定は「派遣先均等・均衡方式」と「派遣元労使協定方式」の2種類あります。このうち、「派遣元労使協定方式」では、派遣労働者と同じ職業に従事する国内の一般労働者の賃金水準を下回ってはならないというルールがあります。国内の一般労働者の賃金水準は、最低賃金の改正や人手不足感に伴い変動しますので、職業安定局長はその変動結果を、統計をふまえて通達しているのです。最低賃金が上昇すると、派遣労働者を含めた全労働者の賃金水準は上昇傾向となります。

派遣労働者の待遇決定は2種類

「同一労働同一賃金」の考え方を派遣労働者にもあてはめる際、誰と比較するかという問題が生じます。
派遣先で派遣労働者と同種の働き方をする労働者がおり(比較対象労働者)、その人と待遇を比べるのが「派遣先均等・均衡方式」です。

この方法では、派遣労働者が異なる派遣先に異動するごとに比較対象労働者の賃金水準が変わるため、派遣労働者の賃金も不安定になります。
このデメリットをカバーするのが、「派遣元労使協定方式」による派遣労働者の待遇決定です。
派遣労働者と同じ職業に従事する、国内の一般労働者の賃金水準を統計を利用して把握し、「世間並の賃金水準以上を支払う」という労使協定を派遣元で締結します。

労使協定式で支払う賃金は3種類

毎年おおむね8月下旬に、職業安定局長は、厚生労働省の統計である「賃金構造基本統計調査」「職業安定業務統計」をもとに、国内のあらゆる職業別の賃金水準を発表します。
この内容をもとに、各派遣元では次年度(翌年4月1日~翌々年3月31日)の派遣労働者の賃金を決め、労使協定を締結します。
必ず支払うべき賃金は「基本給(賞与・手当を含む)」「通勤手当」「退職金」の3種類です。

①基本給

「賃金構造基本統計調査」「職業安定業務統計」をもとに、所定内労働時間に労働した際に支払われる賃金(賞与・手当含む)を時給で決めます。
なお、統計は「全国平均」のため、最低賃金を決める際の都道府県格差を考慮し、「地域指数」を乗じて基本給となる時給額を決定します。

※(例)賃金構造基本統計調査の「自動車組立従事者」が大阪府で派遣就労する場合

②通勤手当

通勤手当は「実費支給」または「時給上乗せ式」のいずれかを、労使協定で決定します。
「時給上乗せ式」とは、統計で把握した通勤手当の金額を統計の対象となった労働者の労働時間数で除して求めた金額を、①の基本給に上乗せして支払う方法です。令和7(2025)年度は73円となっています。

 

③退職金

退職金は「退職手当(退職時一時金)」「前払い(時給上乗せ)式」「中退共に加入する」の3つの方法から選択し労使協定で決定します。
「退職手当(退職時一時金)」は、職業安定局長が示す国内の主な退職金額や支給率(最後の月給に乗ずる一定の率)を参照し、これを下回らない金額を支払わなければなりません。
「前払い(時給上乗せ)式」は、①の基本給の5%を時給に上乗せすることで、日々の賃金を併せて前払していることになります。
「中退共」では所定内給与の5%以上を掛金とします。

世の中の賃金水準とあわせて上昇

このように、労使協定方式の派遣労働者の待遇は、世の中の賃金に関する統計データをもとに決めますから、最低賃金が上昇すると、これにあわせて上昇傾向にあります。
派遣料金も上昇せざるを得ませんから、契約どおり出勤し誠実に派遣就労する派遣労働者を受け入れたいものです。

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