1. 地域別最低賃金が全国一斉に50円程度引き上げられると報道されました。 派遣労働者の賃金水準にも影響があるのでしょうか?

労務管理Q&A

2024.08.22

地域別最低賃金が全国一斉に50円程度引き上げられると報道されました。 派遣労働者の賃金水準にも影響があるのでしょうか?

ご質問内容

最近、厚生労働省が「中央最低賃金審議会が全国一律50円程度の引き上げを答申した」と記者発表しました。都道府県ごとの最低賃金はどのようにして決まるのですか。また、最低賃金の引き上げは派遣労働者の賃金にも影響するのでしょうか。

専門家からの回答

最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種があります。うち、地域別最低賃金については、中央最低賃金審議会が「引き上げ目安」を示した上で、各都道府県別最低賃金審議会で具体的な金額について審議し、都道府県労働局長が決定します。第69回中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対して引き上げ目安を全国一律50円と答申しました。

地域別最低賃金の決定プロセス

大臣が政策を決定する際に、専門家から構成される審議会に意見を聴取します。意見を聴くことを諮問といい、審議会から大臣への返答を答申といいます。厚生労働大臣が最低賃金の改定について意見を聴くのが、中央最低賃金審議会です。

2024(令和6)年7月25日、第69回中央最低賃金審議会は、経済水準によりA~Cの3ランクに分けられた47都道府県について、全ランクで一律50円の引き上げを目安とすることが妥当であると、厚生労働大臣に答申しました。

厚生労働大臣からの指示で、各都道府県労働局では、都道府県別最低賃金審議会を招集し、2024(令和6)年10月以降の最低賃金額変更を検討することになります。

地域別最低賃金の決定プロセス

都道府県の最低賃金額差の是正

都道府県ごとに経済水準が異なるため、47都道府県は以下の3ランクに区別されています。

これまで、物価が最も高いAランクの引き上げ目安額を高く、物価が最も低いCランクの引き上げ目安額を低くする内容で答申されていましたが、今年の中央最低賃金審議会では全区分について一律50円の引き上げ目安額を答申しました。

このことにより、都道府県ごとの最低賃金額の格差が縮小されることになります。

ランク

都道府県

令和5年

引上げ目安

令和6年

引上げ目安

埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 41円 50円
北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡 40円 50円
青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 39円 50円

派遣労働者の賃金水準

派遣労働者は、派遣先の地域別最低賃金が適用になります。
さらに、派遣労働者の賃金は、「派遣先均等・均衡方式」「派遣元労使協定方式」のいずれかによって決定しますので、最低賃金以外の要素も関係します。

 派遣先均等・均衡方式の場合

派遣先で、派遣労働者と職務や人材活用のスキームが同一/近似している労働者(比較対象労働者)の賃金水準が改善された場合、この情報を派遣先から派遣元に提供いただきます。

いただいた賃金水準に関する情報をもとに、派遣元が均等・均衡処遇を考慮して、派遣労働者の賃金水準を決定します。

 派遣元労使協定方式の場合

毎年8月下旬頃に、職業安定局長が職業別賃金水準を通達し、当該水準を上回るように各派遣元では新年度(令和7年4月以降)の派遣労働者の賃金を決定します。

ところで、職業安定局長の通達する職業別賃金水準は、前年度(すなわち令和5年度)の水準を反映していますから、上表のA~C各ランクの引き上げ目安が参照となります。

なお、岸田首相は、「2030年代半ばまでに最低賃金の全国加重平均を1,500円(現在1,040円)とする」と表明していますので、今後も毎年おおむね5%ずつ地域別最低賃金は引き上げられていく見込みです。

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