労務管理Q&A
意欲と能力がある高年齢労働者が増えましたが、転倒事故などが心配です。 高年齢者の被災を防止するために留意すべきことはありますか。
ご質問内容
意欲と能力がある高年齢労働者が増えましたが、転倒事故などが心配です。
高年齢者の被災を防止するために留意すべきことはありますか。
専門家からの回答
改正された労働安全衛生法第62条の2第2項の規定に基づき、「高年齢者の労働災害防止のための指針」が策定され、令和8
(2026)年4月2日より適用されています。このガイドラインに沿って措置を講ずることは努力義務ですが、派遣労働者の場合は、派遣先を「派遣労働者を雇用する事業者」とみなして適用することに留意してください。
休業4日以上の死傷者に占める高年齢労働者の増加
厚生労働省が発表している令和6(2024)年1月~12月の「労働災害発生状況」によれは、
休業4日以上の死傷者に占める60歳以上の高年齢労働者の割合は30%と、高い割合になっています。
<60歳以上の雇用者数>
| 令和6年 雇用者総数 | 6,123万人 |
| うち60歳以上の高年齢労働者数 | 1,171万人 |
| 60歳以上の高年齢労働者が占める割合 | 19.1% |
<休業4日以上の死傷者数>
| 令和6年 休業4日以上の死傷者総数 | 135,718人 |
| うち60歳以上の高年齢労働者数 | 40,654人 |
| 60歳以上の高年齢労働者が占める割合 | 30.0% |
このような状況を勘案し、高年齢者の労働災害防止対策を強化するため、昨年、労働安全衛生法が改正され、第62条の2(高年齢者の労働災害防止のための措置)が新設されました。
(高年齢者の労働災害防止のための措置)
第62条の2 事業者は、高年齢者の労働災害の防止を図るため、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の事業者が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
3 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができる。
同条第2項の「必要な指針」として、「高年齢者の労働災害防止のための指針」が策定され、令和8(2026)年4月1日から適用されています。
事業者が講ずべき5つの措置
指針では事業者が講ずべき5つの措置を明記していますが、特に3および4において職場や作業内容を可能な範囲でカスタマイズするよう推奨していることが特筆点です。
- 安全衛生管理体制の確立等
特に高年齢者の身体能力の低下を考慮したリスクの評価を行い、優先順位を決めて具体的に改善する事項を洗い出していくことが推奨されます。 - 職場環境の改善
1のリスクアセスメントを受けて、視力の低下を考慮した照度や、スピーカー設置による「聞き取り」の補助、手すりやスロープの設置など職場の環境整備をすすめます。また、高年齢労働者の身体能力の低下を踏まえた作業マニュアルの作成、例えば注意力や集中力が持続しないことから複数の作業を掛け持ちさせない等、動作の見直しをすすめます。 - 高年齢者の健康や体力の状況の把握
健康診断による健康状態のみならず体力チェックにより体力を把握し、個々の体力に応じた配置や作業内容を考えます。 - 高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応
3の健康と体力の情報を踏まえ、各人ごとに安全に作業できる職場への配置や、作業補助機器の導入、休憩の時間に配慮する等を実施するとともに、定期的に人事部門とも連携して労働条件の見直しや調整を継続します。 - 安全衛生教育
労働者も積極的に学び自ら被災しないように事業者の措置に協力すべきであることから、高年齢労働者およびその上司となる管理者への安全教育の実施が求められます。
派遣労働者については派遣先を事業者として適用
ところで、労働者派遣法においては、派遣先を「派遣労働者を雇用する事業者」とみなして労働安全衛生法を適用する特例があります。
このたび取り上げた労働安全衛生法第62条の2は努力義務ではありますが、派遣元と派遣先の両方を同時に労働安全衛生法上の事業者とみなして法律を適用します。
労働安全衛生法の「高年齢者」についての年齢は定義されていませんが、法改正前から定められている同法第62条の「中高年齢者」は45歳以上、高年齢者雇用安定法における「高年齢者」の定義は55歳以上であることから、おおむね55歳以上を想定しており、災害防止の観点から特に60歳以上を対象とした指針であると考えられます。
労働者派遣に際し、派遣元から派遣先に派遣労働者に関する通知書が交付されますので、当該通知書の年齢に関する情報にご留意いただき、60歳以上であれば新たに当該指針を念頭において受け入れをいただければと思います。
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