1. 労働者派遣事業に該当しない適正な請負となる条件とは?

労務管理Q&A

2020.09.29

労働者派遣事業に該当しない適正な請負となる条件とは?

ご質問内容

当社は製造業を営んでおり、この度、派遣会社に構内請負を依頼しました。

派遣会社より、当社構内の作業場に派遣会社の看板や境界線のテープを貼りたいという依頼がありました。また請負内容は、出来高払いにして欲しいという依頼がありました。

告示37号の内容については派遣会社より聞いていますが、不安があります。
派遣会社の看板や境界線のテープを貼り、出来高払いをしていれば、適正な請負という認識でよろしいですか?

専門家からの回答

ご指摘の適正な請負とは、労働者派遣事業に該当しないという意味であると考えられますが、労働者派遣事業に関しては、労働者派遣法第2条第1号に「労働者派遣」とは、

「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」

という定義規定があります。
そのため、この定義に該当しないようにすることが必要です。

さらに、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分を明らかにすることを目的として「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)」が定められていて、その第2条には「次のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業とする」旨の規定があります。

1.次のいずれにも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用すること。

イ.次のいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うこと。

(1) 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
(2) 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと。

ロ.次のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うこと。

(1) 労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く)を自ら行うこと。
(2) 労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く)を自ら行うこと。

ハ.次のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。

(1)労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。
(2)労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。

2.次のいずれにも該当することにより請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理すること。

イ.業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。
ロ.業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。
ハ.次のいずれかに該当するものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。

(1) 自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。
(2) 自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。

さらに同告示第3条には「第2条各号のいずれにも該当する場合であっても、それが法違反を免れるため故意に偽装されたもので、その事業の真の目的が労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業であることを免れない」旨の規定があります。

このため、法的には上記の告示第37号の第2条の要件を全て満たし、かつ「法違反を免れるため故意に偽装されたもので、労働者派遣事業を行うことが真の目的」でなければ、適正な請負ということになります。

ご指摘の「看板や境界線のテープを貼る」ことや「出来高払いとする」ことについては、告示第37号の第2条の要件には規定がありませんので、法的には必ずそうしなければならないということではありませんが、後で述べるように行政の解釈にかなりの誤りがあって、労働者派遣事業の範囲を拡大していますので、そうされた方が無難かと思われます。

むしろ重要なのは、告示第37号の第2条の第1号にあるように「業務の遂行や労働時間等、企業秩序の維持、確保等に関する指示その他の管理を請負事業者側で行うこと」や、同条第2号にあるように「請負契約により請け負った業務を請負事業者が発注者から独立して処理すること」などです。

特に第2号ハ(1)の要件である、機械、資材等が発注者から借り入れ又は購入されたものについては、有料の売買契約や有料の賃貸借契約であるなどの別個の双務契約による正当なものであることが必要とされていることなどを、踏まえた対応が必要となります。

行政の解釈の誤りについては、厚生労働省では、労働者派遣事業関係業務取扱要領の告示第37号の解説部分に労働者派遣法が制定されて相当期間が経過した後に「〇〇業務の場合」というのが追加されたり、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」やその第2集が出されたりしていますが、告示第37号の規定の意味を理解していないために明らかに解釈を誤って、労働者派遣事業の範囲を拡大している部分が数多く見られます。

また、労働局や個々の指導官ごとに解釈や取扱いが異なることもありますので、十分ご注意頂くことが必要です。

労働局が指導監督に事業所に入るのは定期のもののほか、労働者や労働組合などからの申告に基づいて臨時で行う場合もありますので、労働者の処遇についても留意された方が良いと考えます。

なお、ご質問の中で「派遣会社」という表現が何カ所かありますが、仮にその会社が労働者派遣事業を中心に事業展開しているとしても、少なくとも請負を発注されている限りは、その会社は「請負会社」であると認識しておくことが重要であると考えます。

監修:木村 大樹 氏(国際産業労働調査研究センター代表)

無料

製造業の人事・労務の最新情報をメルマガで
いち早くお届けします!

メルマガ登録をすると、過去の「労務管理Q&A」も会員専用ページにて全てご覧いただけます。
  • 人材派遣の業界ニュース、関連法案の見解
  • 労働問題のお悩みに専門家が詳しく回答
  • コンプライアンス・セミナーの開催情報