労務管理Q&A
2022年4月1日から中小企業にも義務化されるパワハラ防止措置について派遣先は、派遣労働者からの苦情申出にどのように対応すべきか
ご質問内容
2022年4月1日から、いよいよ中小企業にもパワハラ防止の措置を講ずることが義務化されます。派遣労働者からパワハラに関する相談があった場合、派遣先はどのように対応すべきでしょうか。
派遣先は派遣労働者の雇用主ではないので、対応にも限界があると思うのですが、派遣元との責任分担などは法律で決められていますか?
専門家からの回答
派遣労働者を雇用しているのは派遣元事業主なので一般的に労働法上の使用者責任は派遣元にあります。しかし、派遣労働者を指揮命令しているのは派遣先なので、いくつかの法令は派遣先を派遣労働者の使用者とみなして適用されます。
パワハラをはじめ、セクハラ、マタハラ、育児・介護ハラスメントはすべて派遣元と派遣先の双方を事業主とみなして適用されます。
派遣元と派遣先を同時に事業主とみなし法令適用
労働者派遣法第44条~第47条の4では、派遣就業中の派遣先を派遣労働者の「使用者(労働基準法)」「事業者(労働安全衛生法)」「事業主(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法)」とみなして適用する法令条項の整理を行っています。
以下については、派遣元と派遣先の双方を派遣労働者の事業主とみなして適用することになっています。
対象となる法令の条項・対象となる内容
対象となる法令の条項 | 対象となる内容 |
男女雇用機会均等法第11条・第11条の2 | セクシュアル・ハラスメント防止措置 |
男女雇用機会均等法第11条の3・第11条の4 | マタニティ・ハラスメント防止措置義務 |
育児・介護休業法第25条・第25条の2 | 育児・介護ハラスメント防止措置義務 |
労働施策総合推進法第30条の2~第30条の8 | パワー・ハラスメント防止措置義務 |
以上については、条文の「事業主は」の部分に「派遣先は」をあてはめることになるので、派遣先は直接雇用する労働者と同様に派遣労働者への対応をすすめる必要があります。
「やるべきこと10」に沿った相談対応のながれ
事業主(派遣先)に求められているのは、前号で説明した「やるべきこと10」です。「やるべきこと10」に沿って、相談対応を想定してみましょう。
やるべきこと10の項目 | 具体的な派遣労働者への対応 |
① 職場における各ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、 労働者に周知・啓発すること | ・就業規則や行動基準等に「ハラスメントは行ってはならない」「受け入れ中の派遣労働者も対象になる」旨を明記する。
・啓発チラシ等は派遣労働者にも配布する。 ・派遣労働者も啓発のための研修に参加できるようにする。 |
② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、 労働者に周知・啓発すること | |
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること | ・派遣労働者も派遣先のホットラインが利用できる旨のポスター等を掲示する。 |
④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
|
・派遣労働者からの相談を想定して、派遣先の相談担当者の研修を実施する。
・派遣元との連絡方法も決めておく。 |
⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること | ・相談者の同意を得て、指揮命令者や同僚のヒアリングなどを実施 ・派遣元とも情報を整理し共有する。 |
⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと | ・相談者および派遣元と調整し、必要に応じて班編制変更やシフトの調整で行為者と被害者の物理的接触を減少させる。 |
⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと | ・行為者に不適切な言動が確認できた場合は、注意指導を行う。 |
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること ※注 たとえ調査の結果、ハラスメントの事実が把握できなくても再発防止措置は必ず講ずる |
・事案の発生原因(例えばわかりにくい指示方法、新人への作業手順教育不足など)に鑑み、手順書の改訂や教育マニュアルの見直し等を行う。 |
⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じその旨労働者に周知すること
⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること |
・啓発研修やホットラインの啓発ボスターにおいて「秘密厳守」「相談したことで不利益な取扱をしない」旨を周知する。 ・派遣元と情報を共有する際は、相談者である派遣労働者に同意を得てすすめる。 |
「また働きたい」の声がきかれる就業環境づくりは、派遣労働者の定着と熟練化を促進します。
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