1. 2022年 4月から中小企業にもパワハラ防止の措置を講ずることが義務化されるが具体的に何をすればよいのか

労務管理Q&A

2021.10.30

2022年 4月から中小企業にもパワハラ防止の措置を講ずることが義務化されるが具体的に何をすればよいのか

ご質問内容

既に大企業では義務化されていますが、2022年4月 1日から中小企業でもパワーハラスメント(以下「パワハラ」 防止の措置を講ずることが義務化されます。具体的にどんな準備をすればよいのでしょうか。
また、 派遣労働者からの相談 があった場合、派遣先あるいは派遣元事業主のいずれが対応すべきでしょうか。

専門家からの回答

職場でのパワハラ防止については、労働施策総合推進法※注1の第9章(第30条の2~第30条の8)で定められています。
具体的には、パワハラ防止ガイドライン※注2で事業主が講じなければならない措置を定めていますので、ガイドラインにそって準備をすすめるとよいでしょう。

※注1 正式名称「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(昭和41年法律第132号)
※注2 正式名称「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号)

パワハラの定義

この法律が定められるまでは、わが国にパワハラを定義した法律は存在せず、パワハラをめぐる裁判の結果判例における表現が引用されていました。
今回、労働施策総合推進法でのパワハラの定義は以下のようになっています 。

職場において行われる

①優越的な関係を背景とした※言動であって、

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

③労働者の就業環境が害されるものであり、

①~③ までの要素を全て満たすものをいいます。

※「優越的な関係を背景とした」とは、業務を遂行するにあたって、言動を受ける労働者が、言動の行為者に対して拒絶または抵抗できない蓋然性(がいぜんせい→ ある物事が実現する又は真実である確実性)が高い関係を背景としていることをさします。

各ハラスメント共通の「やるべきこと10」

パワハラ防止ガイドラインは、これまで法制化されてきたセクハラやマタハラと共通の内容になっています。これをを機に全ハラスメント対策をいっそう充実させてください。

セクハラ マタハラ 育介ハラスメント パワハラ
根拠法

男女雇用機会均等法
第11条、第11条の2

男女雇用機会均等法
第11条の3、第11条の4

育児・介護休業法
第25条、第25条の2

労働施策総合推進法
第30条の2~第30条の8

事業主が
講ずべき措置

事業主の方針等の明確化及びその周知啓発
① 職場における各ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること

相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

職場における各ハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと(注1)
⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと(注1)
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること(注2)
(注1)事実確認ができた場合 (注2) 事実確認ができなかった場合も同様

そのほか併せて講ずべき措置
⑨ 相談者・行為者等のプライバシー(注3)を保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
(注3)性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む。
⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

労働者派遣法第47条の2、第47条の3、第47条の4では、上記の4つのハラスメントについて「派遣元事業主および派遣先を同時に事業主とみなして法令を適用する」と定めていますから、派遣労働者にも相談窓口やホットラインについて周知をしておきましょう。
解決までは、相談の秘密に配慮しながら、派遣先責任者と派遣元責任者とが連携して対応してください。

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