労務管理Q&A
カスタマーハラスメントの具体的な対策はどのようにすべきか。 派遣先は派遣労働者からの相談にも対応すべきか。
ご質問内容
先月号で厚生労働省が作成した『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』(以下「マニュアル」といいます)を取り上げて、どのようなものがカスタマーハラスメントにあたるのかを見ました。
それでは、企業は具体的に対策としてどのようなことをすべきでしょうか。
専門家からの回答
現在、カスタマーハラスメント対策は企業の努力義務となっていますが、マニュアルでは①労働者に対する会社方針の明示と具体的な教育訓練の実施、②相談窓口の設置、③社外の機関との連携、④被害をうけた労働者への配慮、などに取り組むとよい旨が示されています。
また派遣労働者からの相談には、派遣先と派遣元事業主の双方で対応するよう努めなければなりません。
カスタマーハラスメントに対する基本方針の策定
会社は「働く人をカスタマーハラスメントから守ります」という方針を策定して社内に周知します。例えば以下のような周知ポスターを事務所や店頭に貼るだけで、それを見た「過度にクレームを入れる顧客」へのけん制にもなります。
弊社はお客様に真摯に対応し、信頼や期待にことえることで、より高い満足を提供することを心がけます。一方で、お客様からの常識の範囲を超えた要求や言動の中には、従業員の人格を否定する言動、暴力、セクシュアルハラスメント等の従業員の尊厳を傷つけるものもあり、これらの行為は職場環境を悪化させるゆゆしき問題です。
わたしたちは、従業員の人権を尊重するため、これらの要求や言動に対しては、お客様に対し、誠意をもって対応しつつも、毅然とした態度で対応します。
もし、お客様からこれらの行為を受けた際は、従業員が上長等に報告・相談することを奨励しており、相談があった際は組織的に対応します。
(厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」より抜粋)
社内における教育・研修
顧客への接遇マナー教育やCS教育だけではなく、以下のように悪質なクレームに対する現場での初期対応についても教育することが大切です。
- 過去にあった実例から学ぶ「こんなクレームにどのように対応するか」
- お客様からの通常の意見や苦情と悪質なクレームとの境界線は何か
- 最初に対応した労働者から上長に取り次ぐタイミングはいつか
- 現場の管理監督者から本社(本部)のお客様相談室や法務部へ情報を共有した方がよい事案はどのようなものか
相談窓口の体制
被害を受けた労働者や一報を受けた上長等が相談・報告できる体制を整えます。セクハラやパワハラの相談窓口を利用することもできますが、平素のクレーム対応のフローの延長線上にカスタマ―ハラスメント対策を設けてもよいでしょう。
日常的に現場の管理監督者で対応できるものと、本社を通して全社共有した方がよい情報などの基準を設けておく とよいでしょう。
弁護士、警察との連携
暴言、脅迫やつきまといといった悪質なカスタマーハラスメントについては、弁護士に相談し行為者へ警告を行うことも考えられます。また、居座りや暴力行為、器物の損壊がある場合は、警察へ通報するようにします。
インターネットへの誹謗中傷の書き込みは、プロバイダーに書き込みをした人物の情報を開示するよう請求し、当該人物に削除するよう要求します。
被害にあった労働者への配慮
希望を聴取し必要に応じて職場の異動や、シフトの変更を行います。また、上長等が素早く初期対応できるように研修するとともに、労働者らにも定期的にケーススタディによって「このように対応してください」と具体的に被害にあわないための対応を周知します。
接客を行う部署だけではなく、営業先や電話による外部との接触もありますので、全職域で、受け入れた派遣労働者や正社員以外の労働者も対象に教育するようにしましょう。
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