労務管理Q&A
改正労働安全衛生規則が施行され、熱中症対策が事業者の義務になりました。派遣先は派遣労働者の熱中症対策も講ずるべきですか?
ご質問内容
改正労働安全衛生規則が施行され、熱中症対策が事業者の義務になりました。派遣先は派遣労働者の熱中症対策も講ずるべきですか?
専門家からの回答
労働安全衛生規則が改正され、令和7(2025)年6月1日に施行されました。これにより、事業者は熱中症対策を講ずることが義務となりました。派遣労働者は派遣元に雇用されていますが、熱中症の防止は派遣就業場所において行う必要があるため、派遣労働者の熱中症対策は派遣先の責任となります。
熱中症防止のための定め
労働安全衛生法第22条では、以下のような内容を定めています。
第22条 事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
① 略
② 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
③④ 略
第27条 第20条から第25条まで及び第25条の2第1項の規定により事業者が講ずべき措置及び前条の規定により労働者が守らなければならない事項は、厚生労働省令で定める。 (以下省略)
上記のように、同法第22条では従前より「高温による健康障害の防止」を定めていましたが、具体的な措置の内容を定める厚生労働省令(労働安全衛生規則)の改正によって同規則第612条の2に「熱中症を生ずるおそれのある作業」に係る事業者の義務が明記されました。同規則第612条の2では、次のことを事業者に求めています。
② 熱中症の悪化防止措置の準備・周知
派遣労働者については派遣先を事業者とみなす
ところで、派遣労働者は派遣元(派遣会社)との雇用関係の下で派遣就業していますが、労働安全衛生法の一部は、労働者派遣法により「派遣先を派遣労働者を使用する事業者とみなして法律を適用する」という特例があります。
労働者派遣法第45条第3項では、上記の労働安全衛生法第22条については「派遣先を派遣労働者を使用する事業者として適用する」と整理していますので、受け入れた派遣労働者の熱中症対策は派遣先の義務となります。
具体的な熱中症対策
今回の改正により熱中症対策を講ずる義務が生ずるのは、業種・職種・屋内外・規模のいずれも不問で、以下のような環境下で作業を行う全ての場合です。
したがって、建設業など屋外での作業だけではなく、工場や倉庫など建物の中、また飲食店における厨房なども対象になりますので、全事業者において注意が必要です。
① 熱中症患者の報告体制の準備・周知
熱中症の疑いが発生した場合、本人または周囲の作業者が、通報し責任者へ情報が伝達される体制を整えます。また、その内容を当該作業場で作業する全労働者(派遣労働者も含む)に周知します。
② 熱中症の悪化防止措置の準備・周知
熱中症が発生するおそれがある環境下で作業させる場合は、事業者はあらかじめ作業場ごとに、以下の措置の内容および実施手順を定めます。またその内容を当該作業場で作業する全労働者(派遣労働者も含む)に周知します。
業務災害における重篤な熱中症は、初期症状への対応が遅れたことによるものが多くなっています。各作業場には、迅速な対応ができる体制の構築が求められます。
この記事の監修者

- 北桜労働法務事務所 特定社会労務士
- 株式会社北桜戦略人財研究所代表取締役社長
- 株式会社北洋銀行 社外取締役監査等委員
- プロフィール
- 平成6年4月、旧労働省入省。鹿児島労働局、本省、北海道労働局にて需給調整指導官等を歴任。
平成20年3月に厚生労働省を辞職、札幌に北桜労働法務事務所を開設。
行政経験を活かし、人材ビジネス分野を中心に労務全般に強い社会保険労務士としてコンサルティングを行っている。
公式HP
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