労務管理Q&A
2021年1月改正の派遣先指針で「派遣先が主体的に対応すべき」とされる 派遣労働者からの苦情相談はどのようなものか
ご質問内容
このほど「派遣先が講ずべき措置に関する指針」が改正されました。
わが社は派遣労働者を多数受け入れており、これまでも派遣労働者からの苦情相談については、派遣元と連携しながら対応してきましたが、今回「派遣先を事業主とみなして適用される労働関係法令に関する苦情には、派遣先が主体的に対応しなければならい」と同指針に定められました。
具体的にどのような苦情相談をさすのでしょうか。
専門家からの回答
派遣労働者を雇用しているのは派遣元事業主なので、労働基準法等の労働関係諸法令は派遣元事業主に事業主(※)としての責任を課しています。
しかし、派遣労働者は派遣先で就業しているので、派遣先でなければ管理できないことがあります。このため、便宜的に派遣先を派遣労働者の事業主とみなして、法令を適用し責任を課することがあります。
改正派遣先指針では「派遣先を事業主とみなす内容に係る苦情」については、派遣先が主体的に対応するよう求めた内容になっています。
※ 労働基準法の「使用者」、労働安全衛生法の「事業者」、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法ならびに労働施策総合推進法の「事業主」を、ここではまとめて「事業主」と表現しています。
■ 派遣先が講ずべき措置に関する指針(派遣先指針)とは
労働者派遣法は、派遣労働者を受け入れる派遣先にも、派遣先責任者の選任や派遣先管理台帳の作成をはじめ、様々な責任を担うよう定めています。
派遣先が担う労働者派遣の実務について、どのようなことに留意し、具体的に何をすべきかを示したものが「派遣先が講ずべき措置に関する指針(以下「派遣先指針」といいます)」です。
2021年1月1日、派遣先指針が改正施行され「派遣労働者から派遣先へ苦情相談があった場合」の対応について、派遣先が留意すべき事項が大きく改正となりました。それが、冒頭の「派遣先が主体的に対応しなければならない」とされた事項です。
各都道府県労働局による派遣先への立入調査では、これら指針の内容について問われることがありますので、改正点を理解しておきましょう。
■ 便宜上、派遣先が派遣労働者の事業主とみなされることがある
労働者派遣法では、同法第44条~第47条の4において以下のとおり派遣先を「派遣労働者の事業主」とみなして、法令上の責任を課しています。違反した場合の行政指導も派遣先に行われ、罰則も派遣先に適用されます。
以下の内容について派遣労働者から苦情相談があった場合は、派遣先は「自らが事業主とみなされる」ので、派遣元に委ねたままにせず、主体的に解決のために必要な措置を講じなければなりません。
労働者派遣法の 該当条項 |
派遣先を派遣労働者の 事業主とみなす法律 |
派遣先に管理の責任が求められる事項例 ※ 例示であり全てを網羅していません |
---|---|---|
第44条 | 労働基準法 | 受け入れた派遣労働者に関する
|
第45条 | 労働安全衛生法 |
|
第47条の2 | 男女雇用機会均等法 |
|
第47条の3 | 育児・介護休業法 |
|
第47条の4 | 労働施策総合推進法 |
|
※ 労働者派遣法第46条ではじん肺法、第47条では作業環境測定法について、それぞれ派遣先に適用される事項を定めていますが、ここでは掲載を省略します。
■ 苦情相談があったら
派遣労働者から「苦情の申出先」に相談があった場合は、派遣先責任者に取り次ぎましょう。派遣先責任者は、それが上記の「派遣先を事業主とみなす法条項」に関する事項であると確認したら、派遣元と連携するとともに、自ら雇用する労働者からの相談と同様に苦情解決に取り組んでください。
対応の内容は、全て派遣先管理台帳に記録する義務があるのでお忘れなく。
監修:田原咲世 氏(北桜労働法務事務所 社会保険労務士)
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