1. 2020年改正派遣法における個別契約書について

労務管理Q&A

2020.05.29

2020年改正派遣法における個別契約書について

ご質問内容

2020年改正労働者派遣法における個別契約書等についての質問です。

個別契約書の記載事項に「派遣労働者を協定対象労働者に限定するか否かの別」があるかと思います。
当社で受け入れている派遣労働者は、全て「協定対象労働者」であると派遣会社より報告を受けています。

この場合は、「限定する」と記載しておいた方が宜しいでしょうか?
「限定しない」と記載はできないのでしょうか?

また、「限定しない」と記載した際は、派遣先より派遣元へ提供する情報について変化があるのでしょうか?

専門家からの回答

今年4月に改正された労働者派遣法では、労働者派遣契約の記載事項に「派遣労働者を協定対象労働者に限定するか否かの別」が追加されました(労働者派遣法施行規則第22条第6号)。

この規定にあるように、「限定する」か否かが重要ですので、ご質問にあるように「限定しない」と記載した場合には「協定対象労働者」以外の者も労働者派遣の対象となり得ることになります。

この場合には、労働者派遣法第30条の4第1項の労使協定の対象とならない派遣労働者を労働者派遣の対象とすることがあり得ることになりますので、不合理な待遇を禁止する同法第30条の3が適用されることがあり得るになります。

そうなると、派遣会社は派遣先に雇用される比較対象労働者の待遇を知る必要があり、派遣先は比較対象労働者の待遇等に関する情報を派遣会社に提供する必要があるため、その義務が課されています(労働者派遣法第26条第7項)。

具体的には、次の情報を派遣会社に提供する必要があります。

  1. 比較対象労働者の職務の内容、職務の内容と配置の変更の範囲、雇用形態
  2. その比較対象労働者を選定した理由
  3. その比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容
  4. その比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質とその待遇を行う目的
  5. その比較対象労働者の待遇のそれぞれについて、職務の内容、職務の内容と配置の変更の範囲その他の事情のうち、その待遇の決定をするに当たって考慮したこと

一方、「限定する」と記載した場合には一定の教育訓練と福利厚生施設の内容に関する情報を派遣会社に提供するだけで足ります。

「比較対象労働者」については、それを誰に選定するか自体が派遣先にとって大変な作業になりますし、さらに提供する情報を集めて整理するのも大変な作業です。

そういうことを考えると、派遣会社から派遣労働者は全て「協定対象労働者」であると報告を受けているのであれば、「限定する」と記載した方が良いのではないでしょうか。

貴社の方針として、上記のような大変な作業があったとしても、「限定しない」ということであれば、もちろんそれも可能ですが、その場合には慎重に検討され、派遣会社とも十分調整された方が良いと考えます。

監修:木村 大樹 氏(国際産業労働調査研究センター代表)

無料

製造業の人事・労務の最新情報をメルマガで
いち早くお届けします!

メルマガ登録をすると、過去の「労務管理Q&A」も会員専用ページにて全てご覧いただけます。
  • 人材派遣の業界ニュース、関連法案の見解
  • 労働問題のお悩みに専門家が詳しく回答
  • コンプライアンス・セミナーの開催情報