労務管理Q&A
派遣労働者の賃金水準を決める職業安定局長通達が発出されました。 労使協定方式で待遇が決まる派遣労働者の賃上げはいつからですか?
ご質問内容
2023(令和5)年8月29日に厚生労働省職業安定局長通達が発出されました。この通達は、労使協定方式で待遇を決定する派遣労働者の賃金水準を決める指標になります。派遣労働者の次の賃上げはいつからですか?
また、最低賃金と職業安定局長通達の示す賃金水準は、どちらが優先されますか?
専門家からの回答
職業安定局長通達が示す賃金水準は、原則として毎年4月1日から翌年3月31日まで適用されます。したがって、2023(令和5)年8月29日に発出された通達の賃金水準は、2024(令和6)年4月1日から適用されますので、そのタイミングで派遣労働者の賃上げが必要になります。
なお、通達の賃金水準が最低賃金を下回っている場合は最低賃金が優先して適用されます。
派遣労働者の待遇決定は2方式
派遣労働者の「同一労働同一賃金」を検討する際、「誰と比較して不合理な待遇ではないと判断するか」という問題が生じます。
労働者派遣法では以下の2つの待遇決定方式を定め、派遣元がいずれかを選択して自社の派遣労働者の待遇を「不合理ではない」ものとするよう求めています。
① 派遣先均等・均衡方式
派遣先で、比較対象労働者(派遣労働者と同一または近似した働き方の直接雇用労働者)を選び、当該比較対象労働者の待遇と受け入れる派遣労働者の待遇とを比較して不合理な相違がないようにする方法です。
② 派遣元労使協定方式
厚生労働省職業安定局長が、厚生労働省の賃金に関する統計をもとに「一般の労働者の職業別賃金水準」を公表するので、当該賃金水準を上回る待遇で派遣労働者を
派遣することを、派遣元事業所の労使協定で定める方法です。
職業安定局長通達とは
職業安定局長通達では、前出②の労使協定方式によって派遣労働者の待遇を決めるための「基本給」「通勤手当」「退職金」の水準が示されています。派遣元では、労使協定によって以下を組み合わせて一定水準以上の待遇とすることを派遣労働者と約束します。
したがって、職業安定局長通達が発出されると基本時給を含む以下の賃金水準が新しくなるので、翌年4月以降の派遣労働者の待遇も新しくなり(賃上げ)、これに伴い派遣料金も引き上げられる可能性が高くなります。
最低賃金との関係
ところで、各都道府県によって物価をはじめとした経済水準が異なるので、職業安定局長通達が示す基本給を全国一律額とすると、地域によっては不公平となります。
このため、職業安定局長通達の職業別基本給に、都道府県ごとの地域指数(経済水準を示す係数)を乗じて、都道府県ごとの基本給水準を補正します。
以下は、派遣労働者の時給が最低賃金を下回る例です。このような場合は、派遣労働者の初任給は当該派遣先の地域別最低賃金が優先されて適用になります。
製造業の人事・労務の最新情報をメルマガで
いち早くお届けします!
- 人材派遣の業界ニュース、関連法案の見解
- 労働問題のお悩みに専門家が詳しく回答
- コンプライアンス・セミナーの開催情報