1. パワハラと指摘されることを恐れて部下を強く叱れない。 必要な指導とパワハラの境界線はどこか?

労務管理Q&A

2022.01.26

パワハラと指摘されることを恐れて部下を強く叱れない。 必要な指導とパワハラの境界線はどこか?

ご質問内容

2022年4月からち、中小企業にも職場におけるパワハラ防止の措置を講ずることが義務づけられます。社内にその旨を周知したところ、管理職から「部下を厳しく叱ったらパワハラなのか」という質問が寄せられています。
必要な指導とパワハラの境界線はどこでしょうか。

専門家からの回答

パワハラは「業務上必要かつ相当な範囲を超えて」相手に精神的・身体的な苦痛を与える行為であると定義されています。
つまり、「業務上必要かつ相当な範囲」の叱責や指導は、パワハラにはあたらないと解されます。

なぜ部下を叱るのか、理由を考えると適切な叱り方もわかる

業務上、部下を叱ることはあるでしょう。なぜ叱るのでしょうか。多くは「部下がミスをした」「ルールを守らない」など、「部下の誤った認識や行為をただす」必要があるからでしょう。
「業務上必要な」とは、「部下のあやまちをただす」ための行為です。
それでは「相当な範囲」とはどこまででしょうか。

それは目的を達成するまで、すなわち部下が正しい認識を身につけるまで叱ることが「相当な範囲」なのです。

部下を叱る理由 部下がミスをしたから、それをただすため
業務上必要な範囲 部下が正しい認識を得るため必要な行為

例)マニュアル、手順書を一緒に確認する

ミスがどのように危険な行為かを説明する

業務上相当な範囲 部下が正しい認識を得て自らのミスを反省するまで

 

部下が正しい認識を得て、二度とあやまった行為をしないと反省したら「業務上必要なこと」は達成されたので、叱ることをやめます。
ここまでが「相当な範囲」なので、それ以上叱り続けると「相当な範囲を超えて」しまい、パワハラになる可能性があります。

適切な「指導」のプロセス ~「叱る」ことはコミュニケーション~

STEP1 なぜ部下があやまった行為をしたのか叱る前に仮説をたてる

Q マニュアルを正しく理解していない?
Q 間違っている人を手本にした?
Q 急いでいたので手をぬいた?

STEP2 部下に「なぜその行為をしたのか」質問し原因をつきとめる

Q なぜマニュアルと違う手順で作業したのか?
Q なぜマニュアルと違う手順で作業したのか?

STEP3 業務上必要な「叱り」「指導」・・・原因別に適切な指導をする

部下のあやまった行為の原因 原因に応じた業務上必要な指導
作業に必要な知識を正しく理解していない マニュアルや手順書を一緒に確認する
間違っている人を手本にしている

かつて指導した人が間違っていた

マニュアルや手順書を一緒に確認し、間違っている人を手本にしないよう注意する

(間違っていた人への再教育も手配する)

手抜きをしてもたいしたことはないと考えている 手順をふまえないことで安全上の問題が生ずることを説明する
本人の能力を上回るノルマが課せられているため手抜きしている 本人には「できません」と正直に作業責任者に伝えるよう指導する

(現場長にも本人の作業量や担当の見直しを伝える)

STEP4 「業務上相当な範囲」に達したら叱ることは終了

業務上必要な指導によって、部下が正しい認識に達した、また原因別に再発防止のための措置が整った場合、「業務上相当な範囲」の「叱り」「指導」「教育」は目的を達したので終了する。

NG行為

・ミスの理由もきかず叱る(業務上必要な指導かどうか不明)
・長時間罵倒し続ける(業務上相当な範囲を超える可能性がある)
・人権を侵害する言動を行う(何があっても人権侵害はダメ)

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